2.《ネタバレ》 ブライアンシンガー版が好きな人ならば、本作はあまり好意的には受け入られないと思う。本作はシンガーがネチネチと作り上げてきた世界観をぶっ壊すほどの大胆な展開・世界観をみせている。まるで「ターミネーター3」のような作品。
自分は、シンガー作品のスケールの小ささや、根底にある暗さ、生真面目さにあまり馴染めなかったので、本作の思い切りのよい「潔さ」やふんだんに金を掛けた「派手さ」には十分満足できた。本作のようなメチャクチャなストーリーも意外とハリウッド大作としては珍しいだろう。「斬新さ」という点で評価したい。
「差別」や「共存」や「選択」とか、そういう哲学的なことを考えたい人には向いていないだろう。
分かりやすい「友情」や「愛」を中心に持ってきているので、万人向けの娯楽大作に仕上がっている。チャールズ(プロフェッサーX)とエリック(マグニートー)の複雑な友情も見所の一つだ。画像的な見所は満載すぎるほどで、「ウルヴァリンVSジャガーノート」や「アイスマンVSパイロ」といった、「この対決は観たかった」という宿命の対決がみられるのも心が躍る。
【鑑賞時のご注意】エンドクレジット後にも、とても大切なストーリーが続くので、絶対に最後まで席を立たないように。試写会では、驚嘆や疑問の声が織り交ざった声があちこちから発せられていた。色々な意味があるとは思うけど、やや「蛇足」かもしれない。
【ちょっとネタバレ】ある意味で、本作で強烈なインパクトを示したのは、スコット(サイクロップス)ではないだろうか。Ⅰから観ている者には彼には楽しい思い出が残っているはずだ。Ⅰでは「クソ」呼ばわり。Ⅱでは「チームのお荷物(いわゆるゴミ)」。そしてⅢでは…。この壮大で壮絶な罰ゲーム、彼の身体を張ったギャグに我々は戸惑うばかりだ。
いったい彼が何をしたというのか?いったい誰の逆鱗に触れれば、ヒーローのチームリーダーがこれほどまで不当な扱いを受けることになるのか?世の中の不条理を一身に背負わされてしまった気がする。しかし、我々は決してスコットのことを忘れることはないだろう。「彼が身体を張って我々に伝えたかったことはなんだったろうか?」ということを鑑賞後からずっと考えている。最近ではこう考えるようにしている。彼は遠い宇宙に行ってしまったのではないか。彼は「冥王星」という星になってしまったのではないかと。