208.松本大洋の原作漫画と直接比べてしまうと、やはり優劣の差は明らかになってしまう。
僕は、漫画の最後で描かれる5年後の“スマイル”と“ドラゴン”が浜辺で会話するシーンが好きなので、映画のラストカットもスマイルの「眠いや」という台詞で締めてくれたなら、この映画に対する評価がさらに上がったろうことは間違いない。
久しぶりにこの映画を観て、ラストシーンを見終わった後も同様のことを感じたけれど、そこにSUPERCARの「YUMEGIWA LAST BOY」を携えたエンドロールが流れ始めた時点で、やっぱり良い映画だなと思った。
素晴らしい漫画や小説を映画化するにあたり必要不可欠なことは、そういった「付加価値」だと思う。
それがなければ、原作をどんなに忠実に映画化したところで模倣以外の何ものでもないし、逆にそれがあれば、原作に対して多少変化があったとしても許容できるというものだ。
即ち、原作と比べると拭い去れない物足りなさを感じつつも、この映画を「良い映画だ」と言わざるを得ないのは、「付加価値」がしっかりとついているからだ。
それは、SUPERCARの音楽だったり、強敵の異様なまでの迫力を歌舞伎役者の大見得で表現させたキャスティングだったり、「月にタッチするなんてワケないよ」という映画オリジナルの台詞だったり。
映画と原作がまったく同じ素晴らしさを持つなんてことはあり得ないし、ある必要もない。
漫画を読むと映画を観たくなる、映画を観るとやっぱり漫画を読みたくなる。
そういう関係性を原作漫画との間で生んだこの映画は、やはり“奇跡的”な漫画の映画化だったと思う。