1.《ネタバレ》 私にはつまらなかったです。
単に面白くないというだけでなく、サム・シェパード(主演・脚本)とベンダースコンビに対して、「私にこんなもの見せるな」という嫌悪感を感じたのだった。だったら見なければいいのだけれども。商業映画として公開された以上は、想定外の〝彼らの価値観〟を見せられてしまったことについて、言わねばならぬと思うことがある。
もう、ストーリーなんてものはあんまりにもくだらないのでどうでもいいのだが、「自分の知らない間に何人子供が生まれていた」とか「たとえ一度も会ったことがなくても、血がつながっていれば何かを感じるはず」だとか、つまんない男性の幻想を2時間もの映画にしてしまうことも、大御所のオジサン2人が顔を寄せて考えたとは思えぬあまりにも幼稚な発想だなあ。まさか本気で言ってるんじゃないよなあ。
それから、作り手が「目に見えぬ家族の絆というもの」を持ち上げたいばかりにこれでもかと「物質否定」を繰り返し見せること、これが私には耐えられない。
なにも「家族の絆」を強調したいからって、「モノなんかどうでもいいんだ。モノに意味なんかなにもない。モノなんかこうしてしまえ!」という描写に走るのはあまりにも芸がないうえに短絡的。
〝モノ〟に罪はありません。ハワードにしろアールにしろ、物を粗末にしすぎます。食べ物だって、おいしくいただかなければかわいそうです。お母さんが用意してくれた朝食くらい、素直にいただきなさいよ。お母さんが、大切に磨いて乗っている車は、もっと大事に乗りなさいよ。ゴミをそこらへんにポイするのはいけませんよ、ハワード。それに、たまにはシャワーを浴びて体をきれいにしなさい。
人様に借りているアパートの窓ガラスを、故意に割ったりしてはいけませんよ、アール。そのうえ、窓から家具を放ったりしては、よその人にケガをさせるかもしれないから危ないでしょう。それに、まだ使えるものを、わざわざ壊したりしてはいけません。モノは、使われるために誰かが作ってくれたものなんだから。それに、あなただけの道ではないのだから、自分で散らかしたら、ちゃんと片付けなさい。………と、私の言いたいことは生活指導の先生のようになってしまい、そうか、ハワードもアールも中学生並みの精神年齢ということなんだなあ、などと思う。
シェパードとベンダースコンビには日本のこの言葉を知ってほしい。〝もったいない〟