3.《ネタバレ》 ずっと前、美保純が気に入った映画として紹介していた。どうでもいいけど、美保純。ハネケ作品の中ではメジャーな位置にある一品みたいだ。が、やっぱり私はハネケ映画に謎解きしか求めていない不埒な観客だった。「隠された記憶」に興味を持ったのはそういうことだ。
で、比較的メジャーとされる「ピアニスト」は、私の謎解き欲を全く満たしてくれなかった。
淡々とした日常動作を単調な演出で延々と見せる合間に突然衝撃的な場面を入れるとかいう手法はもう慣れてしまったし、「ピアニスト」では途中からエリカの妄想をそのまま流しているだけだし…それにしては、「どこからが妄想なのか」という推理もそれほどしたくはならない。面倒な気すらする。
ラストの発表会の日にエリカの顔が全く腫れていなかったことで、「妄想だよ」とハネケはバラすけれど、バラされて感心するようなオチではない。と私は思う。ここでウォルターが朗らかな態度を取ることで、手紙自体も渡されていなかったとわかるし、おそらくホールのトイレ場面から妄想なんだろう。どうでもいいけども。
で、ついでにいうと、自宅のバスルームでのカミソリ場面から母親の「まあやだ、気をつけてよ」については、変態性を強調するというよりはエリカが生理の無い女性であることをハネケが強調したかったのだと思う。生理が無い、未だかつて来たことがないのか、妊娠以外の理由で来なくなってしまったのかは不明だが、とにかく現在無月経。なので、自傷行為癖も兼ねて、「ちゃんとある」ということをわざと母親の目に触れるようにしたということだと思う。…ここにきて、映画という媒体にタブーはあるべきなのか、などと考える。エリカが月経のあるふりをしたい、というところを表現するのはいい。そのために自傷までしているという脚本でもいい。…が、それをしているところをあんなふうに見せるのは私は断固批判したい。あなたはしょせん男でしょう。女性に対して敬意を払うべき。と主張したい。この場面は女性を侮辱している、と私には感じられる。
ハネケについてはいろいろな評価があると思うが、「既存のもの(作品、表現)」に対するアンチという気負いが非常に強く感じられ、ショッキングな描写を売りにするのは本当に感心しない。残念だ。