1.《ネタバレ》 「今、韓国は戒厳令だから、夜は外出が禁止されている」はずなのに、一目惚れした日本人に会いに来る韓国男子。説明セリフが全編にわたるシナリオ技術の稚拙を如実に示していることはともかく、このシーンが酷いのは、韓国の時代状況といった大きな問題を「恋愛の障害」レベルに陳腐化、矮小化していること。■あるいは、主人公の少女とその父親が和解するシーン。両者の和解を見守る母親の演技が、全編にわたる演出技術の稚拙を如実に示していることはともかく、問題なのは、父親世代が抱く韓国への偏見と差別が、父親の唄によって、すべてチャラになってしまうこと。日本にありがちな偏見を通り一遍に描き、「唄」という叙情で解決を与える、それで事足りるとする姿勢。■つまり、日韓が抱える様々な問題を「恋愛」劇の中に矮小化すること。あるいは、陳腐な恋愛劇に型どおりの「問題意識」を与えること。その根底にあるのは、例えば戒厳令下の街を肌もあらわな敵性国家の女子高生が駆け回る、この設定に代表される無神経と知性の欠如、「こんなもんでいいんじゃん」という映画へのなめきった態度。■そのあげくの結論が、今時の中学生でも言わないであろう「戦争を知らない我々の世代は仲良くしようね」、そして「なごり雪」がすべての問題を甘く甘くオブラートに包みこむ。■ようするにとことん頭が悪いのだ。だから、こんなになめた映画を作れるのだろう。もしかしたら「俺たちいい映画を創ったよね」くらいのことを思ってるのかもしれない。その夜郎自大ぶり、その頭の悪さに反吐が出る。