1.「みせもんじゃねぇぞ。」スペンサーはスターだから、どこへ行っても匿名の存在になることはできない。だれからも「ハワード・スペンサー」として見られる。それはかつて彼自身が望んだことだったし、家を飛び出した理由でもあった。でも、他人がおもっているスペンサー像は、本人とは違う。だからスペンサーは自分を「ハワード・スペンサー」として以前に、「息子」や「父」として端的に付き合ってくれる人たちを訪ねていったのだとおもう。ウェンダースの映画らしく、ユーモアに溢れ、美しい山々に溢れ、優しさに溢れた映画だった。サラ・ポーリーもウェンダース映画の天使の系統をしっかり継承していて素晴らしい。ジェシカ・ラングも内に秘めた苦しみをものすごく暖かく表現していて見直した。それに、本当の自分を捕まえたスペンサーがまた元の世界に戻っていくところがとてもいいシーンだった思う。原題もステキだ。