20.《ネタバレ》 クルーゾーは「悪魔のような女」の方が好きだが、この作品も傑作。ねっとりした恐怖を味わうアンリ=ジョルジュ・クルーゾーの問題作。
ストーリーは至極単純、職にあぶれた男たちが「金のためならなんだってやる」という映画。
金も無く餓死するくらいなら、死んでもいいから一時の金と食事にありつける仕事を引き受ける。それがこの街の男たちだ。
ファーストシーンから素晴らしく汚い(褒め言葉)出だし。虫の群れにそれで遊ぶチ●コ丸出しの子供。
一瞬「これ別の映画?」と戸惑ってしばらくすると、おっぱいの飛び出そうな女の子が酒場の床を拭いているではないか!
よかった!フランス映画だった!!(安心するところがおかしい)
最初1時間はひたすら登場人物の掘り下げ。
この丁寧すぎる掘り下げが後の恐怖を盛り立て、尚且つ酒場での緊迫したやり取りや燃え盛る油田の描写など退屈させてくれない。
毒蜘蛛?そんなもん足で殺っちまいな!
そして残り1時間30分に渡る恐怖の大仕事。
油田の火災にはニトログリセリンの大爆破が一番(どういう事なの)
わずかな振動でも全てを吹き飛ばす悪魔の液体ニトログリセリン。
時限爆弾はまだ猶予があるが、今度の爆弾は何時でも運び屋を皆殺しに出来る。常に体にまとわりつくような粘っこい戦慄。
“橋”のスリリングな出来事からマリオとジョーのコミカルなやり取りで癒された。
もう完全にヒロインですジョーのおっちゃん。
仕事を受けた運び屋は二組、ニトログリセリンという爆弾は人の心も破壊するのか?
しかしニトログリセリンは岩も破壊すれば、人の心の壁も破壊し、一時の安息も破壊する・・・恐怖を味わう間も与えずに。
爆風で吹き飛ぶ巻煙草、焼け焦げた爆発の跡の生々しさ、屍人の骸が眠る黒い沼、ぶらんぶらんの足、そして踏ん張る杭。
それでも男たちは仕事をやり遂げる。たとえ最後の一人になろうとも。
ただ一つ言えるのは、爆弾が人を殺すのでも、車が人を殺すのでもない。
それを扱う人間が一番の殺人者なのだから。
・・・でも正直言わせてくれ。あんな終わり方したら恐怖を通り越して笑っちまうよ。だからこれだけは言わせて欲しい「クソワロタ」と。
何だったんだよ今までのカッコイイ主人公は。俺も思わず卒倒したくなったわ。俺の涙を返してくれ。
そんなワケで、俺はウィリアム・フリードキンの「恐怖の報酬」の方が好きです。