73.《ネタバレ》 サメ映画の原点にして頂点……と断言してしまうのは、後続の映画群が可哀想になりますが、思わずそう言いたくなるくらいの傑作ですね。
正直、サメ本体の造形に関しては現代の目からすると稚拙であったりするのですが、ジョン・ウィリアムズの音楽と、スピルバーグの冴え渡った演出とが、それを忘れさせてくれます。
桟橋を破壊するシーンで、敵となるサメが如何に怪力かを知らしめてくれるのも良いし、今ではお約束となっている「巨大な歯を拾い、そこからサメの全長を推測する」流れも、実に効果的。
特に印象深いのは「樽を三つも背負っているんだ、潜れっこない」という台詞の後に、サメが海に沈み、水音が止んで静寂に包まれる演出ですね。
劇中の人物だけでなく、観客にも(潜れっこないはずなのに、潜りやがった!)という衝撃を与えてくれて、本当に痺れちゃいます。
サメを発見したかと思いきや、実は子供の悪戯だったと分かり、気が緩んだところで、本物が襲来するという緩急のある展開も良かったですね。
ここで主人公の息子が標的となる訳ですが、事前に子供が殺されているので(子供といえど、無事に済むとは限らない)という危機感を煽ってくれる形。
グッタリした息子を地上へと引き上げる際に、死体かとドキドキさせておいて、無事な下半身を映し出し(良かった……食べられていない)とホッとさせるのも上手かったです。
ちょっと気になったのは、終盤に主人公達三人が、酒を飲みながら語り合うシーン。
ここ、再観賞する前の自分の認識では「それまで喧嘩してばかりだった三人が打ち解け、一致団結してサメに戦いを挑む事になる名場面」というものだったです。
でも、いざ実物を観てみると、仲良くなったのは一時的で、翌朝には再び喧嘩してばかりの関係に戻ってしまっているんですね。
あくまで猟師のクイントの過去を描き、人物像を掘り下げるのが目的の場面であったみたい。
どうも都合良く美化した上で記憶していたようで、何だか寂しかったです。
それに対し、終盤のサメとの対決シーンは記憶に残っていた通りの素晴らしさであり、嬉しかったですね。
そもそも「海に浮かぶ小さな船」というだけでも孤立感が強いのに、その船の中にまでサメが襲い掛かって来て、沈みゆく船の中で戦うという、二重の意味で「追い詰められた」緊迫感が凄まじい。
派手な爆発と共にサメを倒すも、生き残ったのは主人公のブロディ唯一人……という寂寥感の中で、実はフーパーも生きていたと判明し、ホッとさせてくれるエンディングも良かったです。
後に無数のサメ映画を生み出す事に繋がり、それと同時に(結局、原点である「JAWS/ジョーズ」が一番面白い)という認識さえも生み出してしまった、恐るべき傑作。
でも、自分は後続のサメ映画の数々も好きですし、他のジャンルにおいては「元祖を越えてみせた名作」を幾つか知っているだけに、希望を失いたくはないですね。
(これは「JAWS/ジョーズ」より面白い!)と思えるようなサメ映画と、何時かは出会ってみたいものです。