1.《ネタバレ》 香港映画界の巨匠キン・フー(胡金銓)が手掛けた究極の武侠映画。
ブルース・リーの師匠みたいなもんだし、何よりサモハン・キンポーが武術指導。そこにキン・フーの静と動の演出を撮り抜く演出。
それは日本で言えば伊藤大輔や黒澤明のような重厚さがあり、尚且つマキノ雅弘や山中貞雄のような肩の力を抜いて楽しめるシャープでスピーディーな・・・まあ理屈をこねても仕方ない。とにかく面白れえ。
モチロン、アクションだけ関して言えばブルース・リーやジャッキー・チェンといった後続の方が洗練されているだろう(キン・フーの場合はブッ飛びすぎ)。
ただ、個性豊かな登場人物やドラマの面白さは今の中国映画なんぞより遥かに面白い。
冒頭15分はそんな丁寧でコミカルなドラマで楽しませてくれる。
「迎春閣之風波」は中国は明の時代が舞台。
お上の殿下率いる田豐たちと朝廷に反旗を翻す朱元璋一門の戦いを描く。
舞台は朱元璋一門の門派が密かに開設した料理屋「迎春閣」で繰り広げられる。
「迎春閣」に訪れる奇妙な客たち、それを迎える武闘派姉ちゃん・姉さんたち。
博打をやる者、飯を食う者大歓迎、ただし強盗連中は容赦なく滅多打ち。
序盤のドタバタした楽しいやり取りを見ていれば解るだろう。機密文章だとか、敵味方が誰か解らないとか、怪しげな美女とか、キン・フー映画に其の辺のスリルは皆無です(褒めてます)。
いや、いつ誰が刃を抜き放ってもおかしくないという肌を刺すような緊迫感は「龍門客棧」の方が圧倒的だ。だが楽しさは断然コッチだろう。
そこから中盤はシリアス一色になってくる。緊迫したやり取りや次々と血に染まる「迎春閣」、そしてラストのダイナミックなバトル、バトル、バトル!ラストバトルの壮絶さ、華やかより男勝り・女傑振り!愛嬌より度胸!それがキン・フーの女たちだ。
しかしコレで驚いていてはいけない。
「大酔侠」や「忠烈図」はもっとブッ飛んでるから(スタントマンじゃなくて猿が飛んでんじゃないかってくらい)。
個人的にキン・フーの最高傑作は「忠烈図」と「侠女」だが、一番好きなのはやはり「大酔侠」と本作だ。