《改行表示》33.《ネタバレ》 ひと続きの物語ではありますが、何となくオムニバスのようにいくつかのオハナシから成っていて、緩やかながらも構成のまとまりを見せています。 まず最初に、行方不明の4年の間に心を閉ざしてしまった男に対し、彼の弟が何とか心を開かせようとする話。それから、自分が行方不明の間、弟に育てられたわが息子と久しぶりに対面し、何とか親子の関係を修復しようとする男の話。そして最後に、男が、別れた妻の姿を追い求め、接点を持とうとする話。この漂浪の男を中心にこれらの物語が展開した後、最後に妻の方へスポットライトが移り、男は再び漂泊の身として消えていく。 この物語の移ろいそのものが、いかにも寂しい孤独感を出しているのですが、実際、ここで語られているのも、孤独な人たちが、他者とのかすかな絆に何とか縋り付こうとする物語であったりします。 男と妻を描く場面では、二人の間はガラスで隔てられており、それでもなお、二人は何とかこの映画の中で、同じショットの中に二人の姿を収めようと、さまざまなポーズをとる。この場面における抑制された情熱、静かでありながら深く印象に残るクライマックスです。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2016-06-18 08:15:35) (良:2票) |
《改行表示》32.ヴィム・ヴェンダースはドイツ時代に「さすらい」や「都会のアリス」といった傑作を幾つか撮っているが、アメリカでもこのような素晴らしい作品を残してくれた。 砂漠を放浪していた謎の男トラヴィス。 ファーストシーンがいきなり砂漠。そこを男がフラフラ彷徨っている。こういうオープニング大好きだ。今から何が始まるのか無性にワクワクしてしまう。 バックミラーと車道の対比も面白い。こういう一画面で二つの場面を交差させる構成、たまらない。この映画はバックミラーのシーンみたいに色んな対比が出てくる。 彼は何故砂漠を放浪していたのか?そして何者なのか?それを少しずつ紐解いていく。トラヴィスは探しものを見つけるために旅を続けているという。 彼は唯一残っていた名刺に誘われ家族の元へ戻っていく。 妻を持った弟、その“息子”とのささやかな団欒。“息子”とは最初距離があったが、トラヴィスと過ごす日々は彼を得体の知れない男から大切な家族へと変えていく。 そして“息子”とトラヴィスの空白を埋める8mmフィルム。 無粋な言葉はいらない、ただ心で触れ合った思い出さえ取り戻せれば良いのだから・。会いたいという気持ち、会うべきなのかと葛藤するトラヴィス。 だが彼も男だ。“息子”のためにもトラヴィスは探しものを見つけに行く。そんなトラヴィスも、とうとう探しものを見つけ出す。 窓越しの再会、8mmフィルムに収められた想い出、100万の言葉にも勝る包容・・・トラヴィスは、またあてのない荒野へと戻っていく。 でも、こに寂しさは感じられない。何故なら彼の心はもう“一人”ではないのだから・・・良い映画です。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-03-17 07:44:09) (良:1票) |
31.文句無しのヴィム・ヴェンダースの最高傑作だと思います。彼がこれまで撮ってきたロードムービーは、この作品のための助走に過ぎませんでした(大げさ!?)。徹頭徹尾美しい、繰り返し繰り返し観たい作品です。過去のロードムービーと比較すると非常にポップというか、世俗的というか、分かりやすいというか、ヴィム・ヴェンダースの割には少しアメリカ映画的になっていて、これが絶妙のバランスを生み出しています。 |
30.なんや、喋れたんか。で、めっちゃ、よう喋るやん。 【ケンジ】さん [ブルーレイ(字幕)] 9点(2013-01-28 17:34:37) (笑:1票) |
29.《ネタバレ》 ビデオ、DVDで繰り返し見た大好きな映画。いざ劇場でみると久々な所為か忘れ抜けてるシーンが多くて驚いた。単純に絵として美しい事に驚く。何故主人公が立ち去るのか納得できない。ゆっくり考えたい。10年後20年後と長い距離で観て自分を見比べていきたい。そんな鑑賞に耐えうる素晴らしい作品。 【reitengo】さん [映画館(字幕)] 9点(2011-12-13 16:41:43) |
28.《ネタバレ》 ライ・クーダーのギターが終始同じ調子で奏でられる。でも、呑気に聴こえるシーンもあれば緊張を湛えるシーンもある。ストーリーに照らすと、あの不思議な響きは無常の象徴だった。最後の覗き部屋の会話まではテーマが見えない構成なのに興味が途切れなかった。男が再び無責任に居なくなるエンディングなのに、ある種の感動があった。それは恐らく、再び一緒に家族で暮らすことへの不安と恐怖がある程度は理解できるからだ。4年前に突然失踪した男の行動は確かに極端ではあった。でも、愛しているが故に葛藤を繰り返していたはずの女への愛が無くなったと自覚したとき、「逃げ出したくなった」と言った男の言葉に虚飾はない。強く愛していることの裏側にあった不安が喪失に変わって男の心を飲み込んだ。それは純粋な愛情が確かに存在していた証であり、同時に人生の無常でもある。こんな想いは、程度の差こそあれ、誰にでも覚えがあるのではないだろうか。少なくとも自分には刺さりました。一度は無くなった心をゆっくりと修復して行く男。今作はその様子を追い続けた心のロードムービー。でも最後のピースが嵌らず、心の旅は終わらなかった。彼は今、どの辺りを彷徨っているのだろう? 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2010-01-08 01:58:22) (良:1票) |
《改行表示》27.《ネタバレ》 強い日差しが照りつける荒野を、一人の男が歩く。歩く。歩く。 彼は、なぜ?どこへ?いつまで?歩き続けるのだろう?? とはじめは思います。 一つ一つの疑問が答えとなり、いつまにかこのストーリーに引き込まれていく。 ラストの元妻とマジックミラー越しに会話するシーンは映画史に残るシーンである!! とにもかくにも、素晴らしい作品。 【urara】さん [DVD(字幕)] 9点(2009-07-25 15:06:52) |
《改行表示》26.《ネタバレ》 何だかわからないけど、いい映画。 あのまったりした流れで2時間半飽きなかったから、なかなかのものでしょ。 うまく言い表せないけど、人生というものを感じさせられた。 あと、画がきれいでした。 【θ】さん [DVD(字幕)] 9点(2008-09-18 19:18:48) |
《改行表示》25.《ネタバレ》 ストーリーの展開はとてもゆっくりしているけど、映像の美しさがそれをカバーし、退屈にさせませんでした。 僕はあまり映画やドラマなどで泣かないのですが、マジックミラー越しに語りかけるシーンで泣いてしまいました。 【eureka】さん [DVD(字幕)] 9点(2008-05-04 00:03:27) |
24.演出の妙。あとは監督の不思議な才能。砂漠でさまようシーンで始まるのが良かった。次第に愛がほつれたりからまったりして、人間の愛と、その愛と共に生きることが繊細に表現されています。 【Balrog】さん [DVD(字幕)] 9点(2008-04-08 01:59:25) |
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23.《ネタバレ》 地元の美術館内にあるシアターで見ることができました。皆さんおっしゃっている通り、こんだけの内容で2時間半飽きさせないのは凄いと思いました。トラビスも奥さんもお互いを愛していたけど、正しい伝え方を知らなくて、それが一連の不幸を招いてしまって今に至るんですね。再会できたし話せてお互いを理解できたけど、前の関係には戻らないんですね。すごい悲しい映画でした。映画が終わって自宅へ帰って、彼氏に電話をかけました。見て良かったです。 【キュウリと蜂蜜】さん [映画館(字幕)] 9点(2007-04-06 01:15:47) |
22.己の理性を超えた愛により、愛に敗れた男の話は、愛の真実を静かに物語ってくれる。純愛映画のような劇的な状況はないが、純愛映画より劇的な愛がこの映画にはある。 【ジャザガダ~ン】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-10-30 23:59:27) |
21.ラストのトラヴィスの行動を見て、「バカなやつ…」と思ってしまう。でも心からの軽蔑をこめてそう思ったわけではなく、軽蔑と賞賛、同情と共感の入り混じった複雑な感情を込めての「バカ」なのです。 トラヴィスの行動はけっして褒められたものじゃない。弟夫婦の気持ちを無視しているし、息子を母親が一緒に生活しても幸福が保証されるとは限らない。しかし自分が一緒にいればまた二人を不幸にしてしまうかもしれないと知っているからこそ、あえてひとりで夜明けのハイウェイを行く彼の横顔を見ると思わず…。トラヴィスをかっこいいとは思わないけど、嫌いになることもできなかった。あの男はあの男なりに家族を愛していて、懸命に二人を幸福にしようと頑張ったのだから。人間の弱さや愛情というものの難しさについて、考え込まずにはいられない。 映像、音楽の美しさには驚いた。とりわけ映像については、個人的にはいままで観た映画のなかでももっとも美しいとさえ思った。全編にわたって圧倒的なクオリティ。「映像詩」という言葉はまさにこのような作品のためにあるんじゃないだろうか。 【no one】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2005-07-05 14:01:26) (良:1票) |
20.穏やで温もりのある美しい音楽。誰もが認める、抜群のカメラワークからのいくつもの美しい風景と映像。そして不器用ながらも、しっかりと息子であるハンターを心から想い、心から愛し、そしてハンターの良き父になろうと努力するその姿。再会当初はぎこちないものの、言葉を交わし、共に時間を過ごすに連れて、少しずつ“父と子”の姿に染まって行く、その切なさ。これほどまで、繊細で不器用なストーリーは見た事がない。しかしこれこそ愛すべき姿。僕はこの映画とトラヴィスが大好きだ。 【ボビー】さん 9点(2004-10-30 08:58:37) |
19.何といってもトラヴィスとジェーンがマジックミラーを隔てての対話の場面がいい。作品はあの場面に内容のほとんどが語られて、見ている側の情感も昇華、消化、される。回想シーンなど使わずに、対話によって、感情のぶつかり合いによって、画くことで、トラヴィスという滑稽で寡黙で不器用な男の虜になっている私たちの胸には、リアルに届く。結末については何もいうことはない。男と女は結ばれぬ関係であった。それだけだ。しかし、悲しい、辛い、寂しい。トラヴィスの去っていく背中は悲しすぎる。 【K・T】さん 9点(2004-08-18 22:43:09) |
18.茫漠と広がる砂漠のような虚無感。彼が旅したのは自らの心象風景の中だったか。しかし、失われたものを快復するために彼は目指す。自意識に根ざす心象風景は常に止め処ないが、そこに一筋の光を見出すことは不可能ではない。砂漠にも静かな雨が降ることがあるだろう。優しさという名の愛情が彼に希望をもたらすが、それはもう遅すぎたか? でも終わりは始まりともいう。大切なのは彼の心の在り様であり、快復であろう。柔らかに降り注ぐ雨は静かに地下へと水を湛え、やがて彼の人の水脈にも連なっていくだろう。彼に必要なのはその為の時間だけである。それが自然というものだろう。 【onomichi】さん 9点(2004-08-13 13:30:36) (良:1票) |
17.男のカッコよさにシビレました。去ることが愛なのか?自分の幸せよりも家族の幸せを選んだ男の勝利。ヒゲ面でマリオみたいだったがトラヴィス、あんたは男の浪漫だ。ビム監督は「ベルリン~」を見て玄人肌の監督だと思ったが同時にポピュラリティーを持っていることが分かった。このサイトに興味を持った、ログインの復帰を待ち望むビム監督のファンの熱意を込めて9点! 【神風】さん 9点(2004-08-12 17:52:57) |
16.《ネタバレ》 愛する人の前から去ることが愛ならば、それはなんと悲しいものか。 【kozi】さん 9点(2004-08-09 01:09:04) |
15.トラヴィスのような奴が本当に自分の親だったら嫌だ。でも、その身勝手さや心に葛藤を抱えながらも最後は振り向かずに去って行くラストは、男の孤独や悲しさ・人生の不可逆さみたいなものを感じて、ど~しようもないくらいダメな奴なんだけど、この男くささっつ~もんに私は無性に惹かれるもんがあって、無性にかっこ良くも感じてしまった。もしかしたら、私の求めてた男の理想像ってのはこんな奴なのかも知れない。ダメ人間だけど…。にしても、皆の中にも「パリ、テキサス」のような生まれ直すことの出来る唯一の場所ってのはもしかしたら、きっと、あるのかも知れない。 |
14.いい映画ですね~。淡々と描いて、しみじみと噛みしめる・・・フィーリングがギルバートブレイクにとても似てると思いました。二台の赤い車を追う映像がとても楽しかったです(どっち、どっち?なんて言いながら中央分離帯に乗り上げそう・汗)。 【ジマイマ】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2004-06-07 14:22:40) |