1.《ネタバレ》 おさななじみの少年2人、康正行と余守恆のあいだに、ある日、転校生の少女慧嘉が現れる。そのことにより生じる少年たちの関係性のゆらぎ、それがこの映画の主題である。しかし、群像劇でありつつも物語が正行の抱える秘密(守恆への恋)に沿って綴られていくため、正行のせつない心情や、それを知り板挟みとなる慧嘉の苦悩は痛いほど繊細に伝わる反面、終盤まで一貫して無邪気で単細胞であるがゆえ鈍感な守恆の描写には漠然とした違和感がつきまとう。クライマックスで彼がとる「行動」などは、美しくも都合のいいファンタジーのようにすら見えてしまう。けれどそんな守恆がラストシーンで、映画のもう一つの核となる彼の側の秘密を吐露するに至る時、それまでずっと不自然に浮き上がって見えていた彼の言動のその一つ一つが、まるでジグソーパズルのピースのようにピタリと空白に嵌っていく。朝の出迎えのうるさいくらいの熱烈さ。いつでも正行の姿を探しているその姿。正行を見失うと途端に不安でたまらないその表情。恋人にたいするような幼いやきもち。そして事故の夜の「行動」すらも。二者択一のクイズは彼の耳に届いていたのだろうか。だとすればどんな思いで彼は聞こえないふりをしたのだろうか。
「康正行、お前は俺のいちばんの親友だ!」
恋も友情も区別のなかった子どもの頃の宣言とまったく同じ言葉で、大好きな気持ちをただただ告げるしかできない守恆。その言葉に滂沱し立ち尽くすしかできない正行。そのあまりに唐突な幕切れはそのまま冒頭へとつながり、同じ場面が今度は守恆の秘密に寄り添うように隠されてきた彼の痛みを一から語りだす。
若書きゆえの稚拙さは否めないものの、これほどまっすぐ胸を貫く映画はそうはない。