5.《ネタバレ》 小さい頃、シャーロック・ホームズと言えば、両つば帽子にフロックコート、又はシルクハットにタキシードを身に着け、スマートでパリッとした外見に、常にパイプを咥えている壮年の紳士というようなイメージを持っていた。おそらく、それは小学校の頃によく読んだ『シャーロック・ホームズの冒険』の抄訳版の挿絵や英国のドラマからの影響だと思う。
その後、ホームズの長編モノ『緋色の研究』や『四つの署名』、『バスカヴィル家の犬』を読んでみると、そのイメージが全然違うということに気が付く。まず、先に挙げた小説のホームズは若い。未だ世間に名の知れない自称探偵の若造でしかない。紳士というよりも外見的には少しだらしない研究者然とした感じで、それでいてボクシングの元ランカーなので体格がよく、背が高い。性格的には極端に意地っ張りで、子供っぽく、かなり偏狂的。重度のジャンキーでもある。
実は小説に描写されているホームズとワトソンのイメージでみれば、映画『シャーロック・ホームズ』の主役2人はわりと原作に近いのではないかと思える。難を言えば、ロバート・ダウニー・Jr、ちょっと背が低いことか。。
ホームズの長編モノって実は推理小説というよりも冒険小説、アクション小説と言っていいものだと僕は思う。小説の最大の見せ場は、探偵による推理の披露よりも、手に汗握る犯人追跡劇だったりして、だから、この映画のあり方は何ら間違っていない。
映画で描かれる19世紀末のロンドンの雰囲気がよかった。古き良き時代末期のロンドン。これから20年も経つと車の登場でロンドンはガラッと変わる。その古き良きロンドンを舞台にしたアクションヒーローたるシャーロック・ホームズのスタイリッシュな冒険譚。そういう映画として僕はとても楽しめた。