2.マイケルに長いこと心酔していた自分にとって、この作品を評価するのは難しい。
素晴らしいのはマイケルか作品としての映画なのかといわれれば、明らかにマイケルだから。
でも、そのマイケルジャクソンの真価が、もしかしたら
豪華仕様のステージを遠方から見るよりも
はるかに近距離から、はるかに本人に近い意味で見通せる。
そういう意味で、これは明らかに「あり」なドキュメンタリーです。
まるで優れた指揮者のように、場の空気を引き寄せ、指先一つ、少ない言葉の一つ一つで操り指示していくプロの演出家としてのマイケル。
これは初めて見る姿でした。
厳しさと柔らかさ、妥協を許さない姿勢と愛情が常に同居している。
そしてともに仕事するスタッフの尊敬と愛を一身に集めている。
歌とダンスが超一級なのは見れば明らかとしても
この稀有な存在感のすばらしさ。
淡々とした映像、ナレーションがほとんど入っていない、過去の栄光のダイジェストなど余計なものを混ぜ込まない、マイケル以外の余計なBGMが一切ない。
そういう「引き算の正解」が、この映画をありにしていると思います。
世界は彼に余計な仮面をかぶせ、スキャンダルのみを過剰に取り上げてこの天才のイメージを汚してきました。
彼はもう終わりだ、彼から得られるものはもう何もないと。
その罪の重さが、この作品を見ることによって浮き彫りになってきます。
より多くの人に見てほしい。
当たり前すぎるけれど、最後にはただそういうしかありません。
ありがとう、さようならマイケル。