14.《ネタバレ》 世界恐慌直後のアメリカ。
職にあぶれた人間でごった返す当時の情勢は、その後の第二次大戦の暗い影も見えてきそうだ。
冒頭こそ淡々としすぎる映像だが、島に入ってからその面白さは加速する。
怪しげな原住民の儀式、
巨大な砦、
そしてそこに君臨する巨獣キング・コング!
ねんどや人形のコマ撮りで動かしているとは思えないほどの動きと迫力!
コングに掴まれたり身ぐるみ剥がされたりで叫びまくる女優の演技もリアルで凄い。
子供の頃は「何でゴリラと恐竜が戦ってんだよ」と理解に苦しんでいたが、今見るとその細かい戦闘描写に見入ってしまう。
コングからヒロインを奪還すべく追う主人公たち、ヒロインを守るコング。
そして事もあろうに、何とコングは人間の手で島からニューヨークに連れていかれるのだ!
安易な思い込みが命取りとなる。
何と愚かな事だろう。
ヒロインを見つけて拘束具を安々と外し逃げ出すコング。
コングはヒロインに惚れてしまったのだ。
セルズニックの演出には常に「愛」が存在している。
後年の「レベッカ」、「風と共に去りぬ」、「白昼の決闘」、「第三の男」における三角関係・・・心が怪獣にはあった。
人間のような感情がコングにはあった。
人間と同じように、コングも赤い血の流れた生き物なのだ。
ただ、コングの純粋な恋心も、人間には恐ろしい化物が叫ぶようにしか見えないのだろう。
コングは戦った。たった一匹で勇敢に戦い、壮絶に散って行ったのだ。
コングの遺体の傍で、コングを捕らえた男が一言漏らす。
いつの時代も、一番の原因となった悪党が生き残るのが世の常だ。
本当に恐ろしいのは、こういう人間なのである。