3.《ネタバレ》 自分の死期が迫ってきた母親が、必死に自分の娘に伝えようとした内容に感動してしまった。 「今、自分が持っているものを愛しなさい」 人は失くしてからはじめて自分が何を一番大切にしていたかに気づいて後悔することが多いと思う。 たとえば、昔は戦争の影響で生きることさえ困難であったが、今は生きることは当たり前であり、また食料が中々手に入らない時代もあったが現代は好きなものを食べることが当たり前になっている。家族に愛されることも、それは家族なのだから当たり前であり、すべて自分が手にしているものを「当たり前」と思う気持ちがたくさん存在している。問題なのはそれらに感謝の念が不足し、愛する気持ちも希薄になっているということ。 だから「当たり前」に存在するものを失ったとき、はじめて事の重大さに気がつき、人は絶望してしまう。こういう気持ちは自分が死ぬ間際か病気になってから気づかされる人間も多いはず。 もう一度、母親の言葉を繰り返すと、人間の幸福は、「今、自分が持っているものを愛する」ということだった。 人は1人で自立しながら生きているのではなく、多くの人から支えられて生きている。恩恵を受けているうえに愛されている。 母親は「そのことを実感しなさい」そして「愛しなさい」と言っているのだと思った。 幸せとは幸せを実感できる心を持つことではないでしょうか。 幸せは自分の周りに必ず存在している。大事な事はそれに気がつくか気がつかないかの違いだけ。 また父親の駄目っぷりも良かった。 最初は非の打ち所もない父親だったが、徐々に人間的な弱さが明らかになっていく。 それを自覚していないと思って少し腹がたったがそうではなく、ちゃんと自覚していた。 自分の弱さや罪を自覚できる人間には救いがある、再生できると思う。 暗い作品だが、わずかに希望の光が見えてきそうなあたたかさのこもった映画でした。