1.《ネタバレ》 拷問をテーマにした重い作品。肉体的に痛いシーンは多いけれども、むしろ精神的な痛さを感じさせられる。
■拷問は、一見すると拷問している側が圧倒的に有利なように思う。だが、いかなる苦痛にも耐えしのぶ覚悟と、適宜相手を錯乱するだけの戦略を持っていると、一転して拷問される側が有利になる。本作は、核爆弾をこっそりと配備した男と、拷問のスペシャリストとを登場させている。そしてその微妙な力関係をあぶりだすことで、互いの精神的な追い詰められ方を描いている。
■誰も決定的に間違った行動をとっているわけではない。拷問をしてでも市民を救わざるを得ない状況もある程度理解できる。Hが拷問のたびに薬(恐らく精神安定剤)を飲んでいるのも、拷問が決して楽しいものではなく、自らの精神を削るものであることを示している。まさに情報を引き出すために必死なのだ。
■しかしヤンガーは狡猾である。爆弾が同じ場所にあったということは、つまり「4つ目の爆弾」の存在は誰も確認できないのである。処理班が失敗したのか、彼がウソをついていたのか、それはヤンガーと処理班以外は知り得ない。だが両者ともに死んでしまっている以上「拷問をした」という汚点と、実際の核爆発の被害だけが残る。妻が死んでも口を割らなかった男が、たかだか子供であっさり口を割るのは怪しいと思ったが、狙いはそういうことであろう。「子供で口を簡単に割ったのは不自然」という意見が散見されるが、あれは「子供を使った脅迫に屈した」のではなく「屈したように見せかけた(4番目の爆弾があるから問題ない)」と解釈するのが正しいのだと思われる。
【追記】アメリカ版ではラストの「4つ目の爆弾」がカットされているらしい。日本公開版のラストの方でないと、そもそもストーリーとして成り立っていないように思う。9・11後のアメリカには精神的によくないとはいえ・・・