16.《ネタバレ》 実際に起きた反乱を元に描かれる本作。
今でこそ「モンタージュ技法なんて使い古されて新鮮味なんか無いよ」と言うかもしれない。
ただコイツを見たらそんな事は言えなくなる。
この映画のモンタージュは新鮮味ではなく驚きと興奮のモンタージュだからだ。
冒頭数分の単調さが、兵士の怒りの声が挙がるあたりから面白くなる。
ウジが湧いて腐った肉を、これほどまでに生々しく描写する。
腹が減っては戦はできぬ。
飢えた軍隊は勝てない。
軍の底を支える兵士の扱いの不当さ、上層部の傲慢への怒り。
当時のソ連社会への怒りを、食料を通じて描くその生々しさ!
それを巡って反乱が起き、その波は民衆にまで流れていく。
そして血で血を争う戦い・虐殺。
「ストライキ」を超えたカタルシス。
母親に抱きかかえられた子供。
手当をしても何をしても助からない。
命の軽さと重さ。
一体民衆が何をした。
ロシア革命から続く理不尽な市民の虐殺。
その怒りを、惨たらしく死んで行く人々の叫びで訴えかける強烈な映像!
それをここまで残酷かつ力強く映していく。
画面に映る男も女も、みんな時代の波にさらされながら、力強く抗い生き残ってきたという鍛えられた表情をしている。
それだけに説得力も段違いだ。
よくもこんな凄い映画を検閲だのなんだのでカットしたり焼き捨てるなんて馬鹿みてえな事が出来たもんだ。
スターリンが悪いんじゃない。
そんな理不尽なやり方を実践できる「人の心」が腐っているのだから。
ふざけやがって・・・。
この映画は「面白さ」を楽しむ映画じゃない。
戦争に対する怒りを感じられるか感じられないか。
それを個々の視点で感じて欲しい映画である。
シベリアの雪の大地を踏み歩くロシア人の力強さを・・・!
そしてこの映画を探し出し、再びこの世の中に蘇らせてくれたスタッフに感謝したい。
音楽的には「マイゼル版」がオススメかな。
あの旗を染めた「赤」の色のように、いつまでも鮮やかに輝く映画だ。