1.《ネタバレ》 私の田舎では、たしか「ターミネーター」と同時上映だった。観客のほとんどが「ターミネーター」が目的だったので、鑑賞する前は期待していなかったと思う。
その反動もあってか、主役のジーン・ワイルダーが、赤いドレスの女に一目惚れするシーンから、私も含め、満席の会場はずっと爆笑の渦だった。
しかし、昨今ネット上に書かれた数少ない評価のほとんどが批判めいたものばかりで、私には悲しくてならない。
主人公とオールドミスのブラックユーモア溢れる無言のやりとり、愛妻と娘のボーイフレンドの関係、親友のゲイの告白など、ストレートな説明を全く使わずに描かれた脚本は「超」がつくほどの絶品だと思う。
主要人物全員が嘘のセリフを交わしながら相手を騙し、騙されて続けている。
ジーン・ワイルダーはビリーワイルダーに負けず劣らずコメディ映画の天才だと思う。
コメディというジャンルは、やはりリアルタイムで鑑賞しないと評価は厳しいものになると思う。特に本作は夜中に一人で観るような映画ではない。
最近、レーザーディスクを安価で手に入れたので久しぶりに観たのだが、ちょっとした細部の演出など計算がやはり上手くて、なつかしさもプラス、終始笑いっぱなしだった。
オールドミスのおばさんを演じていたギルダ・ラドナーは、私生活ではワイルダーの奥さんだったが、この作品の数年後に亡くなっている。
ジーン・ワイルダーは今何をしているのだろう。
最近日本で「大陸横断超特急」のDVD化が再評価されていることを彼は知っているだろうか?
あの日、映画館を出て友人と心底笑いながら帰った記憶が今になって時の経過を感じずにいられない。
私にとって特に思い入れの深い作品である。