4.巨大な兵器を人に向けるのではなく、銀行の分厚い壁を破るためにぶっ放すというストイックさにやられた。アクション映画なのにカット数が異常に少ない。一発のカットだけで緊張感なり叙情を生み出せる力量を感じる。とにかく男の友情に対する描き込みが分厚い。それに対し対照的すぎる思春期の中学生ばりの画一的な女性観。とにかく欲求がストレートである。そしてクリント・イーストウッドのカッコよさ。ジェフ・ブリッジスも映画内で言っていたが牧師とはたいしたもんだ。祈祷とカーチェイスを同時に味わうという超映画的な悦楽がここにはある。ともするとこの映画からはホモセクシャルの香りを嗅ぎ取る人もいるだろうが、そう捉えるとこの映画は酷くつまらないものになってしまう。これは欠損の映画だ。何の欠損でもいい。金の欠損でもあるし、身体の欠損でもあるし、関係の欠損でもある。巨大機関銃を壁にぶっ放すという行為ですら欠損である。この映画をひたすら称えたいのは、アクションという強度を求めるジャンルの中からあえてこのような「弱さ」を提示したからである。「サンダーボルト」に西部劇の精神の継承を見た気がした。これが本当に長編1作目?ラストの高級車での二人の会話と、物語を見事に象徴するタバコの使い方にひたすら感動していただきたい。映画は女と銃と車があればできると偉人は言ったが、タバコも忘れてはならないね