11.《ネタバレ》 いつもなら延々とあらすじを流す(ジョージ・ルーカスが好きな「フラッシュ・ゴードン」の連続活劇よろしく)「スター・ウォーズ」シリーズだが、本作は一気に本編へ雪崩れ込む。
「帝国の逆襲」を思わせる撮影・圧倒的劣勢の中で抵抗を続ける人々、そして「新たなる希望」のデス・スターによって“星屑(スターダスト)”になってしまった名も無き人々の戦い。
彼等は何を成し、何を残したのか。そこには深遠で無数に輝く星々の如く物語が存在するのだろう。
空から降りて来るもの、その下に拡がる大地を懸命に走り続ける少女の表情が物語る恐怖。
両親から託される意志、草むらから見てしまったもの、走り続けた先で遭遇する“扉”。
この映画はひたすら「扉」といった障害物に遭遇する。時にこじ開け、守るために閉ざし、吹き飛ばし、身を挺して「何か」を託して託して託し続ける。
「何か」を心の支えにし、繰り返し唱え、眼に見えない反旗を掲げ続け、己や仲間を鼓舞して何十年と戦ってきた。それがフォースであれ何であれ。
盲目のはずの男は音と気配・経験で敵の位置を知り、棍棒でブチのめしまくり戦闘機を撃墜までしてしまうのだ(つうかドニー・イェン強すぎ)。敵のドロイドでさえプログラムを変えれば心強い味方になってくれる。
出だしの単調さを吹き飛ばすドニー・イェン&チアン・ウェンの愛すべきおっさんコンビの無双振りよ!それが…ああ無情。
その「何か」は同じ叛乱を志す者たちに亀裂も生じさせる。
ある者は命の恩人をシャベルで殴りつけてしまうほど疑い深くなり、或る者は住民ごと爆弾で吹き飛ばすくらい苛烈に憎悪を燃やし、いがみ合い、疑心にかられ、何も信じられなくなり、すれ違い、味方にすら銃口を向け、「再会」を敵の基地ごと吹き飛ばしてしまう複雑な思い。
「何か」を失い続ける連戦、キリのない戦いと逃走の繰り返し、追い詰められていく戦況。
それでも、わずかでも希望があるなら、戦士たちは鹵獲した船に乗り込み敵の懐へと飛び込んでいくのだ!
何も言わずに武装し乗り込んで行く漢たち女たち義勇軍の雄姿。出会ったばかりで名前もよく知らない、知る間もなく別れることになろうとも。
突入間近で「何も成せなかったらどうする」と後悔するような、死の恐怖を示す表情。
それを勇気づけ突き動かす「何か」。自分たちがやらなきゃ他に誰がやる?どうせ敵のど真ん中、逃げ場はない、進むしかないなら死んでも未来に繋げてやらあっ!
すれ違いが引き起こす混乱・混沌、猛烈な爆炎、銃撃、戦闘機が飛び交い戦艦が激突・爆散し兵士たちの屍と瓦礫で埋まり真っ黒に染まる戦場!兵士は消耗品だと言わんばかりに次から次に死んでいく。
その死闘を嘲笑うように、地平線から姿を現すデス・スターの圧倒的絶望感。暗闇から鉛色のシルエットが浮かび上がる瞬間といい、こんなにもデス・スターを恐ろしいと思ったことはない。普段はあんなザル警備なのに…
ギャレス・エドワーズの照射とメッセージを交互に映す演出はじれったすぎて「またあの「GODZILLA ゴジラ」のクソ演出を繰り返すつもりか」とうんざりしていたが、トニー・ギルロイはそれをあえて繰り返すことでクライマックスの虚しさを引き立ててくれる。
一撃が炸裂する刹那、もうどうしようもない、成す術もなく、抱きしめ合い身を任すことしか出来ない姿の…。
それに追い打ちをかけるように、未来へ飛ぼうとする人々を粉々に打ち砕くダース・ベイダーの来襲!白い光が黒いシルエットを際立たせ、扉をこじ開け、真っ赤な閃光を奔らせ薙ぎ払い迫り来る恐怖の権化。この容赦の無さこそベイダーよ!
そんな状況でも扉の向こうへ託そうと抗い続ける散り様、それを受け継いだ者たちが次の「スター・ウォーズ」を語り続ける。名も無きものたちの闘いを忘れない、無駄にしないために。