1.《ネタバレ》 前作の多彩で柔軟な、そして革新的な映像表現はそれまでリアル志向の技術競争一辺倒だったCGアニメーション業界に大きな影響を与えたわ。前作のレビューに書いたように、これから世界中のアニメーション(アニメ含む)製作者は『スパイダーバース』を意識せざるをえない、そのあり様は「スパイダーバース前」と「スパイダーバース後」とに分かれると思ったわ。実際に『ラーヤと龍の王国』や『私ときどきレッサーパンダ』『バッドガイズ』『長ぐつをはいたネコと9つの命』など、明らかに影響を受けた「スパイダーバース後」が登場して。
そして今回、本家の続編は、と言うと先駆者として更なる高みに到達してる状態で凄かったわ。
映像表現は前作が甘く思えるほどに多彩に、芸術的に、奥深く。世界によってタッチが使い分けられ、それぞれが全く別のものとして映え、そしてそれらにキャラクターの心象を映す機能すら与えられて。アートが娯楽性を破たんさせることなく当たり前のように世界を構築している壮絶な作品ね。
アクションシーンでの視覚効果はもはや人間の認識能力を超越しちゃってるレベルだし(いやそれが正しいのかどうかはまたアレなハナシなんだけど・・・)。
ただ一方で140分という長尺のワリにあまり物語が転がらないって難点もあって。ピーターとグウェンのそれぞれ親子の物語である、ってのは判るのだけど会話シーンに時間を取り過ぎてテンポ悪くなってる感じがするし、これで完結にならず続きになりますよ、というのを予感させてからのいつ終わるの?ってとりとめのなさ、まとまってゆかないもどかしさもあって。終わってみれば映像の圧倒感に比べると物語には物足らなさが残ったわ。起承転結の起承だけ、みたいなモノだものね。
でも個人的にはグウェンの描写たっぷりなので嬉しかったわ。前作より更に魅力的に成長していて。一方でペニー・パーカーたったそれだけ?このままいくとすっごく残念なんですけど!って状態だったのだけどラストで溜飲を下げたカンジね。あくまで続編に期待!ってカンジではあるのだけど。
今回は映像表現の凄さだけで十分に満足しちゃった感があって、お話的には次回作をお楽しみに、みたいなところで。いろいろと魅力的なスパイダーマン、スパイダーウーマンも登場して、でも本当の活躍はまだまだって状態なので来年の続編公開をワクワクと楽しみに待つとするわ。