2.《ネタバレ》 この映画にはドレスデンの大空襲がでてくる。だから反戦映画と言われていたりするけど、その見方は十分ではない。主人公のビリーは、地球外生命体トラルファマドール星人に誘拐されてから、事象を四次元的にとらえるようになる。つまり、ビリーは、過去→現在→未来という区別なく、自分の人生の様々な瞬間を何度も行ったりきたりしながら浮遊しつづけているのだ。だからビリーは、自分が死ぬ瞬間やドレスデン大空襲に遭遇する瞬間も何度も体験して良く知っている。このように何度も空襲を体験するうちに、ビリーは『大空襲が起こらないようにすべきだ』という反戦のスタンスよりも、「So, it goes=物事はそういうものなのだ」という緩やかな全肯定のスタンスを取るようになっていく。トラルファマドール星人流のあいさつ、「こんにちは、さようなら」にもおなじスタンスが感じられる。時間軸を漂流する旅人となったビリーには、地上の悲惨な戦争ですら静かで小さな出来事なのだ。このビリーの感覚に共感できる人にとっては、この作品は忘れがたいものになるだろう。