1.愛する人を守るために人は何ができるのか。作品は戦後を生き抜いてきてなお、晩年になって新たな人生の転機に直面した三人の男たちを、同じくこの難しい時代を生きていくことに悩み・苦しむ若いカップルを対比させて描いていく。その描き方はひたすら暖かく穏やかで詩情溢れるものだが、作者の目は鋭く“今”を突いている。国の為に必死の思いで戦ってきたかつての戦友同士が、丘の上から街並みを見下ろしながら「俺たちがあんな思いをしてまで戦ったのは、こんな日本にする為だったのか・・・」と嘆く。その言葉が深く心に響く。終盤、悪徳霊感商法に業を煮やし、義憤で殴り込みをかけるという展開には驚かされるものの、ひたすら家族や友情を大切にし誇り高く生きてきた彼らと、実際の出演者たち(いずれ劣らぬ名優たちは円熟した深みのある演技で、その存在感を余すことなく見事に表現している!)とがオーバーラップして何とも魅力的な作品となっている。彼らは僕にとっても、まさに“忘れられぬ人々”である。今年も素敵な作品にめぐり合えて良かったという感想に尽きる。