9.《ネタバレ》 日本映画史上のベストテンを選ぶ際、必ず食い込んでくる名作中の名作をやっと鑑賞することができた。
3時間を超える大作のため、なかなか観る機会を得なかったが、噂通り3時間という時間があっという間に過ぎてしまう力と流れのある名作であった。
監督は戦前からの巨匠内田吐夢。
この監督の作品を観るのは自身初。
音楽に富田勲。
本作のラストシーンは相当な余韻を残すものであったのだが、それはこの人の音楽によるところも大きいであろう。
そして主演に三國連太郎。
その名演技にはただ敬服するのみ。
『釣りバカ日誌』での三國連太郎しか知らないと、なかなかこの人の偉大さは分からないかも。
その他、左幸子、伴淳三郎等の脇役陣も一世一代の迫真の演技をみせている。
本作はミステリーとして観てしまうと、納得のいかない部分が多々ある。
そういう意味では完璧な作品とはいえない。
しかしながら、上記俳優陣の迫真の演技が、本作を“日本映画史上の名作中の名作”に押し上げている。
特に、中盤の左幸子が三國を久しぶりに訪問するシーン。
ここが最大の見所。
この一連のシーンはゾクゾクしたし、ワクワクしたし、感動したし、両者の演技に惚れ惚れもした。
しかし後半は、妙に強引な推理展開が目立ち、やや尻すぼみ。
小説は読んでいないが、文字で丁寧に書かれるはずであろう推理小説的な部分が、駆け足で進行されてしまうのだ。
しかししかし・・・
ラストシーンは圧巻だった。
これは凄い。
観ていて口がアングリしてしまい、開いた口がふさがらなかった。
これはこの3時間以上に及ぶ大作を最後まで観た人へのこれ以上ないご褒美だ。
ややや、まさに衝撃です。
本作は先にも述べたように、ミステリーや小説の映画化として観ると味気のないものになり、魅力は半減してしまいます。
俳優陣の熱演、効果的に挿入され衝撃度を劇的に高める音楽等に焦点を当てつつ、ストーリーの根底に流れる“人間の愚かさと哀しさ”に目を向けてみるといいように思います。
いずれにしても本作は紛れもない名作です。
そして“日本映画史上の名作中の名作”、これも決して大げさなふれこみではありません。
観るチャンスがあれば、絶対に観るべき作品ですね。