1.鶴屋南北原作「四谷怪談」は数多くあるが、本作はタイトル通り監督木下恵介の独自の解釈によるもの。おどろおどろしい怪談ものとは一線を画しており、実は貧困から抜け出せない若い夫婦の哀しい物語り。悪党直助の企みにはまり、伊右衛門(上原謙)は迷いながらも出世のじゃまとなる妻・お岩(田中絹代)を毒殺してしまう。自ら犯した罪に苛まれ、次第に自滅していく女々しい男を上原謙が好演。《ネタバレ》ラスト、お岩の亡霊が現われる中、屋敷もろとも炎に包まれる伊右衛門。彼の魂は救われたのであろう。木下忠司の情感溢れる音楽も手伝い、何とも哀しい物語でした。