1.《ネタバレ》 自殺者として天国で裁きを受けるリリオム(シャルル・ボワイエ)。
彼が生前に妻ジュリー(マドレーヌ・オズレ―)を殴ったときの記録映像が
証拠として映し出される。
ドイツから亡命したフリッツ・ラングがフランスで撮ったファンタジー作品で、
表現主義的要素などは希薄だが、劇中のシーンが証拠映像として用いられるといった
趣向が「裁き」の主題系と共に渡米後の作品との繋がりも感じさせて面白い。
回転木馬上で出会う二人の、花一輪を巡る手のやりとりから、
リリオムがナイフを自分の胸に突き刺した瞬間、自分の胸に手をやるジュリーの手の動き、
そして運び込まれた瀕死の彼の手を優しく撫でる彼女の手の動きと、
相手への想いを語る手のアクションが全編通じてとても豊かだ。
ルノワ―ルが担当した音楽は、遊園地での陽気な歌の部分だろうか。
仲間だったリリオムの死を悼んで、その遊園地の面々が黙祷を捧げる静かなシーンや、
死んだ彼が夜空を昇天していく幻想的な特撮シーン、
ラストの二人の表情も美しい。