6.ヘレン・ケラーが受けた三重苦と言うものは、一体どれだけの苦しみなのか―…。想像するだけでは語れない壮絶な人生。彼女の苦しみを少しでも知るべく、耳栓・目隠し・マスクをして疑似体験したのは随分前の話。…まず、音が聞こえなくなった時点で一気に押し寄せる不安感。自分の足音さえ聞こえず、行きたくても足が前に出ない。手を伸ばさないと恐くて歩けないのだ。方向を掴めても、安易にグルグル動くと、どこに立っていてどっちを向いているのか…方向感覚を奪われ虚脱感に陥る。トイレに行って帰って来るのでやっとで、5分と持ちませんでした。…だが、彼女はそんな世界を87年も生きて来た訳で…。三重苦は全てのコミュニケーションを奪われたも同じ事。きっと彼女は全てのモノから自分を否定され拒絶されたような…そんな孤独感や絶望を感じていたのではないでしょうか。しかし、肌で感じる“触覚”と言う感覚機能が、彼女の大きな原動力に変えたのだ。それを教えたアニー・サリヴァン。水を感受し、無感覚状態から脱した幼きヘレン・ケラー。そんな誰もが知っているヘレン・ケラーの伝記ですが、この映画の貢献度は圧倒的に強く、また作品のレーゾンデートルを高く評価したい。 【_】さん 9点(2003-11-23 20:59:44) (良:2票) |
5.《ネタバレ》 演じる、ということ その真髄に圧倒されるばかりの100分。役者魂がごうごうと焔立っているかのよう。ここにいるのはアン・バンクラフトとパティ・デュークではなくアニー・サリバンとヘレン・ケラーそのもの。演者同士がその魂をぶつけ合う食堂のシーンは息をするのも忘れる。ああこれはリアル「ガラスの仮面」だ。10代の頃、紙面を息を詰めて見守ったあの緊張が画面を観ながら甦った。オーディションの逸話まで残っているP・デュークは天才の仕事をしている。“見えている”のに目の前の足台に突っ込んでいって頭から転倒するなど、並みの役者にできることではないだろうなあ。 ヘレンの物語については断片的に知っていたけど、ケラー家が南部の名家ということや(父親が典型的な権威主義者に描かれているのも興味深い)、サリバン先生が幼少時に劣悪な施設で育ったということ等は初めて知った。まだ社会福祉の考えが育つ前のアメリカ、ヘレンが生きたのはそういう時代だったのですね。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2015-04-07 23:38:54) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 実在したヘレン・ケラーが三重苦を乗り越え“軌跡”を起こすまでを描いた作品。 もう本当に魂を揺さぶられるというか、心と体のダイナミックなぶつかりあいが舞台劇という狭苦しさを感じさせない。 ベッドで愛する我が子を突然襲う“異変”、愛するが故に悲痛な叫びをあげる母親。 物心付いた時から聞こえない、見えない、喋れないという“闇”の中をもがき続けるヘレン。唯一残された“触感”だけがヘレンを支える。 へレンが闇の中でもがくようなオープニング、常人にはヘレンの行動が奇異に見え、事情を知る家族ですら家庭崩壊寸前まで追い詰められる。 何もしてやれない悔しさ、もどかしさ。どんなに避けんでも娘には届かない…そんなヘレンの心を開こうと列車に揺られてやってくるサリヴァン先生ことアン・サリヴァン。 彼女もまた眼の病気を乗り越え“奇跡”を起こした人だった。彼女は不安と恐怖で闇に閉ざされたヘレンにかつての自分を見る。彼女は唯一彼女に残された“触感”を信じ、それにぶつかってぶつかってぶつかりまくりヘレンを救おうと尽力する。サリヴァンは真っ先に「あなたは言葉を喋れる」と信じてくれた。 水をぶっかけられたら水をぶっかけ返して“教え”、殴られたら殴り返し“教える”。 家を破壊せんばかりに野獣の如く、癇癪を起こした子供のように暴れまわるヘレン、それをねじ伏せるサリヴァンの闘い。そこまでするのもヘレンを信じているから。互いに髪や服を乱し、料理まみれになって。 ヘレンも徐々に不安からサリヴァンへの怒り、憎悪、哀しみを打ち明けサリヴァンを“信じる”ようになる。ヘレンにとって今までここまでしてくれる人はいなかっただろう。真正面から自分とぶつかってくれたサリヴァンに心を開き始める。 ヘレンに幾度と無く刻まれる“手話”、そして感触。その積み重ねがヘレレン「W...A...T...E...R...!」と叫ばせ三重苦を打ち破る。 ポンプを動かし、水に触れ、大地を踏みしめ、樹を掴み、段差を叩き、ベルを鳴らし、母、父、そして“先生”たちとギュッと抱きしめ合う瞬間の震えるような感動。 ああ、人と解り合えるって、こんなにも素晴らしい事だったんだなあって。人を愛する事、自分を愛していてくれた事に気づく事の大切さ。こんなにも良いもんなんだな。それを魂で理解する瞬間。ヘレンにはとてつもない喜びだったと思う。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 9点(2013-12-17 11:22:22) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 偉人モノと思いきや、実はそうでないところが良い。 「言語概念の獲得」と言う描写が極めて難しそうなテーマを、見事なまでに描ききった作品。何はともあれ、ヘレンの演技が凄すぎる、神がかっている! 【もえたん】さん 9点(2003-12-17 01:20:44) (良:1票) |
2.先に79年のメリッサ・ギルバート版を観ていたので「つまんなかったらどうしよ~」と要らぬ心配をしてしまいましたが、まったく比較の対象にするのもおこがましいほど素晴らしい出来でした。これまで数え切れないほどの「天才子役」を紹介されて来ましたが、天才というのは本当はパティ・デュークのような人にしか言ってはいけないことだったんですね。彼女のヘレン・ケラーがこれほどまでに語り継がれていることに心の底から納得できました。本当は目が見えるんですよ、って言われたらちょっと驚くぐらいの本物っぽさで。舞台出身のアーサー・ペンらしく、長回しも多く非常に演技力を問われる作品なんですが、有名な食事の特訓シーンなど、観ているこちらまでヘトヘトになってしまうすさまじさでした。アン・バンクロフトも女優然としてなくて良いですね。いかにも根性ありそうな、当たり役だったと思います。語り尽くされた感のある物語で、何を今さら、という感じはするかも知れませんが、百聞は一見にしかずと言いますので、まだご覧になってない方は是非観てみて戴きたいです。泣けますよ。 【anemone】さん 9点(2003-12-13 00:37:21) (良:1票) |
1.ヘレンの心の開き方の変化を、手と表情が、わかりすぎるほどわからせてくれる。ナプキンを左右に落とすところで、私はいつもハンカチを用意します、でもお涙頂戴作品じゃない。「甘やかせない愛」を忘れている私たちが、泣いて、甘ったれた自分を省みるための作品だと思うのです。 【かーすけ】さん 9点(2003-06-07 22:47:53) (良:1票) |