11.《ネタバレ》 心を病んだ一人の男が、周りの人々のサポートを受け、徐々に回復していくまでを丁寧に描いたヒューマンドラマ。ラースの心の闇の正体。それは母親を亡くした事に対する自責の念でした。出産に対する恐怖。兄嫁の妊娠に、ラースの心は耐えられなかった。そこで彼が求めたのが、決して死ぬ事の無いラブドールでした。絶対的な“安心”がそこに在りました。ところが、周りの人々の優しさが、彼を気遣う思い遣りが、人形に命を吹き込んでいきます。ラースにとっては、ある意味想定外の出来事だったでしょう。洋服屋のショウウィンドウで働き、ボランティアに勤しむラブドール。操り人形は、いつしか彼の手を離れていきました。もはや人格を持った一人の女性。そんなビアンカの死は、彼女が人として生きてきた事の証です。そしてラースが人間の摂理を受け入れた事実を意味していました。彼女はラースの心を癒す使命を全うしたのです。寂しいけれど、希望に満ちたラストでありました。ラース役のライアン・ゴズリングはもとより、端役に至るまで上手い役者を揃えている本作ですが、MVPにはやはりビアンカちゃんを推したい。その画的なインパクトは絶大で、前半は彼女が映るたびに笑ってしまいました。ところが、物語が進むにつれて、本物のレディに見えてきたのが不思議。湖の辺で佇む2人。彼女の瞳から、その口元から、感情を読み取りました。それは観客(私自身)の想いが創り出した“彼女の心”だった気がします。ビアンカは人の心を映し出す“鏡”でした。 【目隠シスト】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2012-05-28 19:23:58) (良:2票) |
10.《ネタバレ》 この作品は、人形を恋人と勘違いしている変な男の話だと思われているが、そうではない。ラースという心やさしい青年が、かけがえのない人の「死」をどのように受け入れるのかという物語なのである。ラースの母は、ラースを産んだときに亡くなっている。いわば、ラースはかけがえのない母を初めから失った状態で産まれてきたのだ。それは、大切な人を喪失するという体験ができないままに、失ってしまったということを意味する。ラースの兄夫婦に子供が授かり、やさしい義姉の出産が近づくことでラースに変調が訪れるのは、義姉が出産によって死んでしまうという恐ろしさゆえと考えられるだろう。だから、ラースは、人形であるビアンカの死を看取ることによって、たとえ義姉が出産ゆえに亡くなってしまうとしても、受け入れられる自信を得たのではないか。大切な人を愛するということは、その人をいつ失ってしまうだろうかという恐れと隣り合わせである。ラースの愛は、たとえ大切な人が死んでしまったとしても、ラース自身は歩き続けて行けるんだという自信に支えられている。この洞察はものすごく深い。 【wunderlich】さん [映画館(字幕)] 9点(2009-08-10 15:54:24) (良:2票) |
9.《ネタバレ》 現実だったら、家族や身内が泣き崩れたくなるほど深刻な心の病をテーマにしながらも、周りの人たちのやさしさに守られて、前半はコメディ要素も交えながら、ほのぼのとした心温まる雰囲気に仕上げています。特に、初めてビアンカを紹介した時の兄夫婦の「えっ?どうしたらいいの、これ・・・」という表情、最高でした。 ラースの心の病の原因は、出産による母の死。兄嫁の妊娠をきっかけに、心の奥に潜んでいた恐怖が心を支配しそうになったため、自己防衛本能が「人に触られると痛みを感じる」体を作り、「死への恐れを感じずに済む存在(=ビアンカ)」を求めてしまいます。 そんな彼の救いとなるマーゴ。彼女のやさしさと人間らしい魅力が、ラースの心に「ビアンカの死」という概念を芽生えさせ、「死」に対する恐怖心の克服、つまり彼の「心の修復の大きな一歩」へとつなげてくれます。 この映画の素晴らしいところは、彼の心の闇を必要以上に説明的にしなかったことで、ハートフルな雰囲気を保ち続けたこと。そして、こういう展開の映画ではお約束の、彼の心を傷つけるキャラクターを極力排除したこと。ボウリングのシーンで「コイツら、何かやらかすんじゃ・・・」という雰囲気満々で登場した彼らも、いい意味での肩すかしを食わしてくれましたね。 何気なく見始めたこの映画、思ってた以上に良質だったので、もう一度じっくりと見ようと思います。 【ramo】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2020-07-25 11:37:33) (良:1票) |
8.《ネタバレ》 口のところが丸くなってないのが幸いだ。(もちろんビアンカのことですが。 ^^;) ライアン・ゴズリングってデヴィッド・アークエットに似てる。(スクリーム1、2、3 の役に立たないダメ警官:デューイ役。 ) テディベア救出の際の小ネタにセンスを感じた。(ビ~ンを思い出したりした。あとチャップリンとかも。 ) 人形相手に精神壊れてしまった( ‥のかもしれない) ラースを嫌いになどならないマーゴの純真な乙女心にキュンとした。 弟想いの義理姉カリン、彼女が発する愛情によって全ては始まったと理解したい。ラース役のライアン・ゴズリングと共にエミリー・モーティマーが良かった。すごく良かった。すごく良かった と3回ほど言っておく。 【3737】さん [DVD(字幕)] 9点(2011-06-12 19:35:30) (良:1票) |
7.《ネタバレ》 これほど優しさに包まれた、心温まる映画を久しぶり見た。 心優しい性格だが母親と早くに死別し男しかいない家庭環境で育ったためか女性とうまく接することができない、いわば内向的で根暗な青年の主人公ラースは、リアルドールのビアンカを恋人にすることで少しながらも外向的になっていく。そんなラースの心理描写や、リアルドールを連れる彼の姿に心配しながらも、彼の優しい人柄のためにビアンカを生きてるものとして接しようとする兄夫婦をはじめとした町の人々、そしてラースと彼の抱える問題を解決しようとする医師との交流を描いたのがこの映画だ。 前半部分はコメディ要素が強い仕上がりとなっており、内向的なラースを心配していた兄夫婦が、彼の僅かな変化に最初は喜ぶもののリアルドールを見て絶句し戸惑う様子やラースとビアンカのデートシーン等、面白おかしい描写が多々見られる。しかし後半はラースの抱える精神的問題や心情の変化、そして恋人であるビアンカとの訣別の過程を主に描いていて、そこに感動的なシーンも多く挿入され、非常に見ごたえのあるものとなっていた印象がある。特にリアルドールであるビアンカが町のさまざまな施設に赴く場面は、非現実的でおかしさのあるものながらも心温まるもので、見ていて非常に心地よかった。 そしてこの映画の魅力を最も引き出しているのが、ラースを演じたライアン・ゴズリングの演技力である。彼の演技は奇妙ながらも優しげなラースの魅力を十二分に発揮しており、とても前年に彼の演じた生徒と関係を持つふしだらな教師と同じ人物とは思えなかった。そのライアン・ゴズリングの真に迫る演技があったからこそラースに過分なほど感情移入が出来、ラースが悩んだり泣いたりする場面でも大いに感動させられる。それほど素晴らしい演技を見せたにもかかわらず、その年のアカデミー賞にノミネートされなかったという事実が未だに信じられないくらいである。 【陽踊り小僧】さん [DVD(字幕)] 9点(2011-02-22 07:34:01) (良:1票) |
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6.《ネタバレ》 体が傷ついて血が出ればすぐ気がつくので治療できる。しかし心が傷ついた場合、気がつかないことが多い。そしてその傷は長い年月を経て、突然本人に異変を与える。これをトラウマと言います。ラースのトラウマは、母親の死や、兄の家出、父の人間嫌いなどが遠因に挙げられる。彼のトラウマが突然発症した原因は、数人のレビューワーさんたちが指摘する通り、兄嫁の妊娠により、出産で死んだ母を思い出したからだと考えます。そういう意味ではラースの妄想は笑い事どころか、目を覆いたくなるほど痛々しい。表面的にはコメディに見えますが、実は心が壊れてしまった1人の男性が再生するまでを描いたヒューマン映画なのです。ラースには同僚の女性や兄嫁のように好きな人がいました。しかし好きな相手がそばに寄ってくると彼は逃げる必要がありました。彼が他人から体を触られると痛みを覚える理由は、肉体がラースに対して警告を発しているからです。「気をつけろ、またお前は、お前を愛するすべての人々から傷つけられるぞ」という警告です。もう二度と傷つきたくないという思いがそうさせたのです。心の傷は必ずこのように肉体に表れます。もはや人に触れることさえできない彼が愛することができる人間はこの世にいなかった─。人形ならば愛しても傷つけられない。抱きしめても痛みを感じない。こうして「ビアンカ」は生まれるべくして生まれたわけです。皮肉なことに兄嫁の深い愛情から逃れるために、ラースはどんどん追い詰められたのでした。ラースの壊れっぷりは凄まじい。そんな彼を周りのみんなが必死になって助けようとする様子は現実では中々見られない。あのボーリングのシーンで突然乱入してきた男たちは、通常だと「お約束ごと」のように、いじめっ子役だ。それがリアルだと言われる。しかし単に現実を知りたいならば新聞で間に合う。映画は現実をなぞるだけのものではない事をこの作品は教えてくれる。「ビアンカ」に生気を吹き込んだのは、まさにラースを愛する周りの人々たちの勇気でした。稀に見る斬新なアイデアを見事に活かした傑作です。 【花守湖】さん [DVD(字幕)] 9点(2010-04-26 20:26:34) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 笑って泣けて、雪が溶けるように心をほぐしてくれるようなチャーミングなファンタジー。極端にシャイなラースが、リアルドールを通して大人への通過儀礼を果たす。抑圧された感情、想いをぎこちなく解き放っていき、1つ1つ大人になっていく不器用な過程を暖かく描写。そして人(特に女性)との触れ合いを克服し始めた時の、ビアンカとのキスシーンには、ラースの成長と共にビアンカへの別れが描かれ、胸にグッときました。 その2人を、戸惑いながらも見守る姉夫婦、地域や同僚の暖かさがとてもいい。最初は困惑した兄が、ラースに一番言いたかったことを伝えるシーンや、母のような姉が「誰も気にかけてないなんて、そんな馬鹿なこと言わないでよ!」とラースに言うシーン。家族なんですよね。あとラースが熊を助けるシーン、佳かったなあ。マーゴと同じく泣き笑いました。 コミカル要素も満載なのに、とてもハートウォーミング。人間を否定しない、強さと優しさと温かさがありました。 【泳ぐたい焼き】さん [映画館(字幕)] 9点(2009-02-11 10:59:43) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 息が詰まるような優しい物語。時間の経過を感じさせない、冬のシーンが続き、春が来て映画は終わる。好きなシーンを2つ。1つ目。ビアンカを”思い出の場所”に連れて行って、ラースが「LOVE」を歌うシーン。あまりにへたくそで、変な格好で歌っているので、よっぽどこころを許しているんだな、って。2つ目。ボウリングのシーン。ビアンカへの気持ちを考えると、ある種異様な背徳感がある。背徳ボウリング。なお、DVD特典として、「女優・ビアンカにまつわる共演者とスタッフの証言」(5分56秒)がありますが、これは本作の外伝なのだとおもう。いい邦題だよね。「、」がニクいよ。 【なたね】さん [DVD(字幕)] 9点(2023-12-12 17:07:54) |
3.《ネタバレ》 これはなにやら、かなり秀逸な映画であるように思う。ラースの心情の変化が、本当に微妙な変化が表現されている。温かい。教会で小さな人形に触れるラース。カリンに抱きしめられ、逃げて転ぶラース。医者に少し触れられただけで痛がっていたのに、いつしかエリックに言われる「力強い握手だ」という言葉。色々なサインが映画の中で登場していて、感心してしまう。ビアンカの表情も場面によって違って見えるから不思議だ。そして何より、ビアンカを紹介されたときの兄夫婦の表情は傑作だった。 【lalala】さん [DVD(字幕)] 9点(2012-07-30 00:24:05) |
2.《ネタバレ》 おもしろかった! ビアンカの登場シーンは笑いをこらえ切れなかったのに、物語が進むにつれほろりと涙が。 一緒に観ていた人の「この映画にはいい人しか出てこなかった」という感想に納得。 確かに。登場人物みんな、徹底して優しいです。ほんとによかった。 個人的にはかなり好みです。 【Catherine】さん [DVD(字幕)] 9点(2009-11-05 21:46:00) |
1.《ネタバレ》 ライアン・ゴズリングがいいですね。『君に読む物語」でも素晴らしい演技を見せてくれましたが、この映画の中でも、見事にその役にはまっています。小さな町の中でこんな温かい人間関係があり得るのだろうかと思ってしまいますが、是非、こんな社会の中で暮らしてみたいものです。涙を誘うシーンが幾つもあるんですが、その一つ一つがいかにも「泣かせよう」としているのではないところが良いです。ほろりとほおを伝うほどの涙を誘います。ラースが兄に「いつ、大人になった?」と問うシーンがあります。そう問われて私自身も「いつ、どんな時に、どういうことで大人といえるのかな?」と、改めて考えてしまいました。それに対する兄の答えがごくごく真っ当な答えなんです。でも、自信を持ってあのように言えないなあと感じました。日本でリメイクしてもとってもいい映画になりそう。せっかくだからオリエント工業・・・・・。 【蝉丸】さん [DVD(字幕)] 9点(2009-08-20 15:45:43) |