1.これは「任侠映画」というより「ヤクザ映画」、いや、この冷めたかっこよさは、むしろ「フィルム・ノワール」。親分子分の内実を冷ややかに描いたところは、『仁義なき戦い』が1973年だから、それに先立つこと約10年。「実録もの」ではないが、そこは後に東京都知事になる作家の原作だけに、哲学的といってもいいような味わいを漂わす。それにつけても、池辺良のかっこよさと、加賀まりこの小悪魔ぶりといったらない。また、東野英治郎と宮口精二という名優による親分二人が、高級レストランでスープをともに下品に飲みながら、「マナーが違うぜ」と注意したりするシーンは傑作だった。それから、親分の歯医者通いシーンは、そうか、これが北野武『アウトレイジ』の元ネタのひとつなんだな、と気づく。