2.賛否が大いに分かれた(というよりも殆どは“否”だった)前作「CASSHERN」から5年。紀里谷和明という映画監督の、創作者としてのエゴイズムと方向性が、圧倒的に正しいということを、改めて確信させるに余りある作品に、この「GOEMON」は仕上がっている。
既存のヒーローを描いた作品でありながら、、独創的で独善的なストーリー展開に突っ走った「CASSHERN」は、多数がどう言おうと素晴らしい映画だった。しかし、その分観客の許容範囲を狭めてしまったことも事実。
しかし、今回は史実に伝説として残りつつも、想像の部分が多分に含まれる”石川五右衛門”というヒーローを扱うことで、自由な表現が出来るから故に、単純明快なストーリーの上に、至高の娯楽が構築されたのだと思う。
当然のことだけれど、この映画に歴史的リアリティやその他もろもろの「常識」を求めるなんてナンセンス極まりない。
あらゆる固定観念を捨て去り、本当の意味でフラットな状態でひたすらに突き詰められた映画世界に没頭すべきだと思う。
日本映画に大きく欠けているもの。それは創造物に対する絶対的な「自信」と、それを持つためのエゴイズムだと思う。
そういうものを備えているからこそ、紀里谷和明という人間の創造物は、「日本」という枠を大きくはみ出るほどの、圧倒的なパワーに溢れている。
今後もそのスタンスを貫く限り、再び彼は「絶景」を見せてくれるに違いない。