1.「モンテ・クリスト伯」に続いて製作されたフランスのTVドラマ大作。こちらの方が枝葉の多い「モンテ」より圧縮はしやすいが、これくらい尺がないとそれらしいものにはならない。ともに十数年投獄され、同じく一人の老神父に導かれながらバルジャンとダンテスの後半生は似ておらず、観ていて面白いのは「モンテ」だけれどもより惹かれるのは必ずしも報われたとはいいがたい「レミゼ」。自分に有利な言動は避けようとする彼の人生の終焉はさびしいものだが、それだけに感じ入る。がっしりとした体格のドパルデューはこちらの方が向いているかもしれない。フランス語の台詞をこなすマルコヴィッチの「法の番人」は彼独特の粘着質なジャベールで拮抗する。前半のヒロインであるファンティーヌはシャルロット・ゲンズブール。自国の名の知れた女優を使いたかったのかもしれないが、映画のユマ・サーマンの方がイメージにあっているように思う。ファンティーヌは不幸な一生とひきかえにしたように華やかに美しい金髪の女性だから。その娘の清純なコゼットに対して立つ負のヒロイン、エポニーヌの存在もミュージカルほどではないが革命に身を投ずるマリウスをはさんで小さくない。ラストは原作とも映画とも異なる劇的なシーンで幕を降ろしており、バルジャンとコゼットの絆を強調して生涯でただ一つの愛を手放した彼へのシンパシーを感じさせる。未見のDVDは8時間を3時間に短縮し英語吹替になっていることでファンには評判が芳しくないようだ。