1.《ネタバレ》 「死にたくなければ生まれてくるな!」、アフリカ怖えええええ!!頭にビーンボールの直撃を喰らった様な久々の衝撃を受けた映画。反政府軍の少年部隊長ジョニー・マッド・ドッグとその部下達が行く先々で殺戮やレイプや略奪をしながら行軍していく姿と、彼らに弟を殺された少女ラオコレが撃たれた父親(戦争で両足を失っている)を連れて戦禍から逃げ回る姿が、対比されながらやがて交錯していく様子が描かれる。それ以外にこれといった話らしい話は無いのだが、略奪した衣服や装飾品を身につけた色とりどりの少年兵が、自動小銃を担いで無軌道に暴れ回る描写がとにかく強烈で、無秩序な環境で分別の無い子供が武器を持つという事の恐ろしさが全編に渡って描かれる。互いを妙なコードネーム(ノー・グッド・アドバイスやらチキン・ヘアーやら)で呼び合い、戦闘前には呪術めいた儀式と鬨の声による集団トランス状態で士気を高め、上官であるネバー・ダイの命令あらば忠実にそれを遂行する。タチが悪いのは彼らは純粋に戦争というゲームに興じている子供なのであって、その無邪気さ故に罪悪感を感じておらず死をも恐れていない点。だからこそウェディングドレスやカツラでふざけた仮装をして、仲間が死んだ時には下ネタまじりの追悼歌で見送るのである。反政府軍の大人達は彼らのその子供らしさに付け入り、恐怖による洗脳と薬物による陶酔で即興の兵士へと仕立て上げ、後退すら許さぬ状況で使い捨ての駒として前線に立たせる。しかし最後には反政府軍のクーデターが成功するやいなやジョニー達は用済みとなり、常備軍に入ったネバー・ダイにあっさりと見捨てられてしまう。何とも救い様の無い話だが、この映画で少年兵を演じているのは実際に内戦を戦った本物の元少年兵であるらしく、これは完全なフィクションではなく世界のどこかで今も起きている現実なのである。劇中で流れるキング牧師の演説やエンディングの「奇妙な果実」は、アメリカとリベリアの関係性を示唆するだけにとどまらず、ひいては地域紛争の多くが先進国との歴史的・商業的な関係性に起因する事を告発している様にも思える。残念ながら日本における本作の興行はさほど振るわなかったそうだが、これは先進国の国民すべてが観るべき映画であると感じる。少なくともジョニー達の境遇に照らし合わせれば、何気なく享受している平和がどれだけ重いものなのかはっきりするはずだ。