2.《ネタバレ》 先に封切りの『ハッピーエンド』を観てしまい、後追いでレンタル。ついつい繰り返し鑑賞3度。観る程にずしんとくる。泣ける。冒頭はドライな現実、そして時間軸を大きく戻して事の始まりから。経済的にも文化的にも、愛情面でも満ち足りた豊かな老後。翳りの兆しは虚血発作、手術の失敗、右片麻痺、車椅子での在宅復帰。先行きの不安。アンヌからそれとなく何度か出されるサイン。終わらせたい。目を背け足搔くジョルジュ。介護する姿を周りは無責任に感動してみたり、高所から傍観して批判してみたり。やがてアンヌは人格も崩壊し負担は大きくのしかかってくる。介護に外部の力を頼ろうにも、所詮育った環境、教育や文化レベルが違う相手のそれは見当はずれ、ある面虐待ですらある。しかしもはや自分の手には負えなくなっていく。破綻は見えている。ジョルジュは諦めず、それ故に追い詰められる。それでも必死にもがき抗う。孤独。娘のエヴァはこのままじゃダメだと言う。それはわかる。ではどうさせたい。ホスピスに送りただ自分が安堵したいのか。それをアンヌは望まない。ジョルジュも受け入れられない。
相手を自らの手にかけることが愛なのではない。愛に追い詰められて、選んだ手段がそれ。愛は命よりも前にあるから(©️オリジナル・ラブかよ)。
終わりに、在りし日のアンヌの白日夢、食器を洗い終えコートを羽織り出掛ける2人。ふたりはずっと一緒。(この後『ハッピーエンド』に続く…のかな。)
ハネケ映画だから心に痛い。でもこれは嫌な痛みじゃない。安っぽく音楽で盛り上げたりしないで、ただ淡々と紡がれていく物語。好きだ。