3.《ネタバレ》 見た目よりは素直な映画で、カラックス自身の映画体験を描きながらある種の古き良き時代への郷愁をユーモアとサイケデリックな映像で表現している。冒頭、カラックス自身が扉を開け、映画館の中へ入っていく。ここから彼の頭の中に入り込むようなイメージ。したがって単なるオマージュではなく、彼の頭の中に残っているままのかつての映画が、デフォルメされて、背景化されてちりばめられることになる。前作TOKYO!で出てきたメルドだけをとってみても、その前作とのつながりと同時にノートルダムのせむし男やキングコング、美女と野獣、そしてゴジラと様々な映画のイメージの凝集であることがわかる(おそらくもっとあるのだろう。マンホールに潜る所もいろいろ挙げられそうだ)。そうした彼の一種の夢の相方はやはりドニ・ラヴァン以外に考えられないのであって、そして「行為action」の美しさを徹底的に追及していることもわかるのである。車もmotorを持ち、動きで魅了するはずのものであったが、ラストの車庫はそれが失われることへの寂寥が感じられるシーンであった(「カーズ」を思い出す)。傑作。