1.《ネタバレ》 冒頭から凄い暴力の連続で全く気の緩む暇がないが、それによって如何に主人公が冷徹な男であるかが印象付けられる。この男は母親に捨てられ30年一人で生きてきたことから、人の痛みを感じる事ができない。感覚的にも物理的にも。ひたすら無慈悲に任務を遂行していく。観客の目にはまるで機械のような、恐ろしい男だと写っただろう。そう思わせた時点でこの映画は成功していた。後は如何に彼を解放するかという事だ。そのためには母親の登場は必然と言えるだろう。 事実、母親が登場してからは人が変わったように閉ざされていた感情をあらわにしていく。
しかし、この男ツンデレすぎない?あれだけツッパっていたのに、急にコロリと態度変わりすぎ。いきなり笑顔で母親と手を繋いでルンルンでショッピングに繰り出したのには笑った。これまでのギドク作品にはあまり見られなかったハートウォーミングなシーンと言えるだろう。ほんの束の間の休息。幸福な時間。しかし、それも実は壮大な恐ろしい計画の内の一部であったとは誰が予想しただろう。
やはりギドク映画、一筋縄でいかない。想像を絶する恐ろしくも悲しい結末が胸を打つ。