1.《ネタバレ》 映画のコピーの「弱小演劇部が全国をめざす!」と聞くと、勝ち進む過程のワクワク感を想像しがちだが、この物語はそんな派手なストーリーが展開するワケではなく、演劇部員たちの日常に寄り添った内容で、共学なのに男子生徒のセリフが全く無くて、大丈夫かと思うくらいストイックで直球勝負のおよそアイドル映画とは程遠い作品となってる。
主演の5人の人間関係がセリフだけでなく、何気無い表情や目線、仕草なんかで実はかなり深い所まで表現されている事に驚いた。注意深く彼女たちの演技を追いかけるほど楽しめる、演出の行き届いた作品となっている。リピート鑑賞で新しい発見が出来る奥の深い素晴らしい青春映画が誕生したと思う。
映画デビュー作であるにも拘わらず、5人とも完璧にセリフを入れて現場で台本を開けることが無かったそうだが(監督談)、それが誰かに言われたり5人で示し合わせたりしたワケじゃなく、各々の映画にかける想いの発露の結果としてそうなっただけという事で、この5人のその想いが周りのスタッフや共演者を巻き込んだだろうことは想像に難くなく、この様ないい映画が生まれたことは必然だったのかもしれない。
【以降、軽いネタバレ有り】この物語の主人公である演劇部員の高橋さおり(百田夏菜子)の、冒頭のシーンの何か投げやりで絶えずイラついてる感じと、上級生が抜けて周りから押し付けれた部長を仕方なくやっている感に「こんな娘に、この先付き合うのか?ちょっとしんどいな」って言う印象で、物語は進んで行く。それが、新任の美術教師の吉岡(黒木華)に演劇の神様を見る瞬間のシーンから物語が動き出す。
黒木華の芝居の説得力に、そこでさおりが感じたであろう鳥肌が立つ様な感覚を共有出来たお蔭で、その後のさおりの感情が手に取るように心に入って来る。そうなってしまうと、何度泣いたか分からないくらい泣いている自分がいた。でも感情が高ぶった号泣ではなくて、気が付いたら涙が頬を伝っている感じだ。
現国の授業中に先生(故人 志賀廣太郎)によって語られる内容が、劇中劇の脚本に多大な影響を及ぼしていて、特に最後の授業で語られたことは、最終的にこの物語の落としどころとなっている。演劇を題材にしているだけに、銀河鉄道の夜をモチーフにした劇中劇の演劇的な言い回しがこの映画の深みを増す大きな要素となっている。
追記
点数はももクロファンだから+1点甘めですw
逆に内輪ネタには閉口しました。特にフジテレビの三宅アナのは雑音でしかなく、しばしば現実に引き戻されてしまって一回目に観た時はももクロが女優の真似事してるだけの映画って感想でした。2度目は全ての内輪ネタをスルーして普通に鑑賞出来たお蔭で感動で涙すると言う、初回より2回目の方がいい映画の感想と言う稀有な経験ができましたw
この映画、女優初挑戦のメンバーたちのドキュメンタリ(決してメイキングでは無く)も映画化されているので、興味を覚えた方は楽しめると思います。「幕が上がる、その前に。彼女たちのひと夏の挑戦」
昔と違ってアイドル映画がコケてばかりいる状況で、本広監督は自分が失敗すればアイドル映画の未来を絶ってしまうと言う危機感が有ったそうで、いつもは演技指導など基本的にしないで映画を撮って来たそうですが、今回ばかりは彼女たちに付きっきりでしたw