1.《ネタバレ》 ほぼ先入観なしで観たのでなかなかの衝撃であった。
随所にあるセリフや流れの不自然さを肯定的にスルーすれば、作り手の伝えたいことは、鑑賞後キズとして残るほどに伝わる映画であろう。
こういうマイノリテイを扱う映画を観ると、いつも村上春樹の演説の壁と玉子の話を思い出す。
人が壁と玉子に分かれるのなら自分は必ず玉子側でいたい。
迫害されすぐにも割れそうな薄い皮の玉子。正義がどうのということよりも、必ず弱い側に立つ視点で描くものが文学であると。
一果の最後の演技がすばらしいのは、凪沙という人間の存在やその取り巻きの世界を知ることで、表現力の幅が普通に育った子とは違う。
というわたくしの解釈である。
過去に心のキズを背負っているものは同じキズのあるものに優しくなれる。
この映画のしんどさを避けて通らず、正面から向かい合って、自分の中に同じキズを作ってくれるような人が我輩は好きである。