2.《ネタバレ》 「圧倒的」、この映画を表現するならこの言葉です。広大でむき出しなアメリカの原風景、孤独、フランシス・マクドーマンドの演技。
定住する家を持たず、自動車生活を余儀なくされている人々。もちろん社会問題として捉えることもできるのですが(初めはそっち系の話だと思っていた)、監督の意図するところはそこではないみたい。
人が生きること、その原点・あるべき心の整理をマクドーマンド演じるファーンを通して私たちは見るのです。ファーンはじめ、同じ境遇の季節労働者の人たちは平均年齢が高く、皆痛みや喪失を抱えて生きています。人との関わりは保ちながら、でも結局は一人で死ぬのだと腹を据えて日々を重ねているその表情は諦念というのでもなく、静かにきっぱりと‶受け入れている”ようでした。
マクドーマンドの乾いたノーメイク顔はもうそれだけで演技を超越しています。ドキュメンタリーと言えそうなほどです。
ノマドの果てに生を終える人、ノマドをやめて屋根の下で暮らす人、それぞれです。過去を大切に抱きしめながら一人きりで大地を踏みしめるファーンの後ろ姿は決して哀れではないけれど、彼女の抱く喪失の悲しみ、痛みが少しでも和らいでほしいと切に願いました。