1.札束が詰まったひとつの鞄を巡って繰り広げるドタバタ・コメディ。主演には大御所S・トレイシーを迎え、周囲にM・ルーニー、J・ウインタース、T・トーマス、S・シーザー、E・マーマン等々といった、オールド・ファンなら狂喜する大物の顔ぶれが並び、しかも社会派のS・クレイマーが監督するといった、ミス・マッチな感覚がまず面白い。クライマックス、鞄をめがけて出演者たちが追いかけっこをするビルの屋外の非常階段が、次々と分解してゆくスリル。それの救助に向かった消防車の梯子に、一度に何人もが乗り過ぎて土台ごと揺れ始め、梯子の頂上から人間がひとりずつ弾き飛ばされていくというスペクタクルな面白さは、まさに空前絶後で、未だかつてこれほど笑った経験はない。S・クレイマー監督らしく、金と人間関係に鋭い風刺を効かせた骨太で逞しい大作喜劇に仕上がっている。