6.《ネタバレ》 これほどまでに美しいモノクロ映像は滅多に出会えない。
1960年代だからこその完成されたモノクロ映像と自然な美しさ。
そしてそういった技術的な意味だけでなく、本作の寓話的でどこか現世離れした雰囲気が、本作をより一層、神秘的な美しさへと押し上げている。
主演の女優は当時17歳であったらしいが、単なる美人ということではなく、儚げで世を憂うような不思議な魅力を発揮している。
薄幸の美人、いや、少女というか感じだろうか。
カメラは執拗なまでに少女のスラリとした脚を映し出す。
これが何ともエロティック。
そんな映像を見せ付けられていると、見てはいけないものをじっと見せられている感じがしてきて、なんか気まずくなってくる。
しかし、じっと見てしまう。
眼が釘付けになる。
画面いっぱいに発散される厳粛な雰囲気、そして、少女の危うい魅力。
ブレッソンのカトリック的な表現手腕が遺憾なく発揮されている。
少女の可愛がるロバも、また印象的。
特に最後の息を引き取るシーン。
なんとも切ない。
涙が出そうだ。
欧州独特の優美な雰囲気が画面に現れ、そこにカトリック的な厳粛さと悲劇、人間が持つ残忍性、そして何より少女の肢体が放つ自然の美たるものが複雑に絡み合い、本作を奏で上げている。
本作はそういう意味で、完成された総合芸術品だといえるだろう。
とにかく何度も観てみたいと思わせる、息をのむ美しさを持つ作品である。