4.《ネタバレ》 「東への道」と真逆の空気が漂う映画。後年の「東への道」の主演陣が「散り行く花」と共通している。
スタートダッシュが素晴らしかった「「東への道」」と比べると、この作品は少し退屈だ。退屈だが、丁寧な人物紹介とシナリオの巧みさ、衝撃的なクライマックスに目を見張る傑作だ。
最初はイエローマンの登場。
とある中国、外国の水兵なども訪れる賑やかな街。修行を終えた一人の中国人(どう見ても中国人て顔じゃありません。本当にありがとうございます。もしかして混血児とか裏設定有り?)が、いま師の最後の教えを受けて旅立とうとしている。
異国への憧れ、夢や希望。水兵の喧嘩を仲裁する姿にはまだ希望が溢れている。
それを打ち砕く異国の地での生活。表情は光を失い、せまい部屋の中で阿片漬になっていた。演奏者たちの爪の不気味さ。様々な肌・顔立ちの人間が入り乱れる。
続いて登場するバトリング・バロウズ。
酒を飲みボクシングで憂さ晴らしをし、情夫にうつつを抜かすダメ親父。気に入らない奴は娘だろうが当り散らす。
阿片窟にいた女がバロウズとの接点を持つ。運命はイエローマンとバロウズたちをやがて引き合わす。
最後に登場するバロウズの娘。
帽子を被り、家に帰るのが嫌そうな暗い表情で座り込む。過去を回想し、唯一帰れる安らぎのない空間へと入っていく。
帰ってくるなり机を叩いてどなりつける父親。「笑ってみやがれっ!」の怒声に、口に指をあてて無理やりの、偽りの笑みを作ってみせる。泣きそうな表情で。彼女は笑う事を知らないのだ。彼女は何度も偽りの笑みを作らされる。
そんな彼女とイエローマンの邂逅。倒れた彼女を見て蘇る“以前の自分”、異国で初めて彼に訪れる“春”の花。彼女の表情からも初めて本物の笑みが浮かぶ。
そんな至福の一瞬が、無理解な父親の一撃で粉々に散ってしまう残酷さよ!すれ違う二人、悪魔の微笑み、恐怖で歪む表情、打ち砕かれる家具、剥ぎ取られ床に打ち捨てられる衣服、霧の街に消えていく叫び。
異変に気づき絶望に暮れる表情、ドアを閉めるが逃げ場のない密室、最後の望みをかけて拳銃を握り駆け出す男、扉を打ち砕く斧の恐怖、狂ったように叫ぶ女、砕かれる板、振り上げられる鞭・・・。
あの瞬間の表情が本当に綺麗でさあ。透明な眼差しというか、何とも言えない表情で・・・何度見ても泣いてしまう。