2.《ネタバレ》 アルベール・ラモリスは「赤い風船」が最高に面白かったが、俺はこの「白い馬」もかなり愉しむ事が出来た。
とにかく馬の凄さを堪能できる一篇だ。
まるでサイレント映画の活劇がそのままトーキーに移ったような作品だった。
白黒の美しい画面の中を、馬たちが時に荒々しく、優美に駆けて行く。
草原を、湿原を、砂漠を、浜辺を走って走って走りまくる。
牧童たちは、野生の馬の美しさに憑りつかれている。
特に野性の馬たちを束ねる白馬の美しさにだ。
まるで西部劇さながらに馬を追い立てる。
人間のために乗馬され、かつての仲間を追う馬たちの心境はどんなものだろうか。
「早く仲間になっちまえよ」とか、それとも「捕まったら俺たちみたいになるぞ早く逃げろ」とか思っているのだろうか。
捕まっても大の大人4人を相手に大暴れの逞しさ。
「!誰が貴様らの奴隷になるものかっ!俺は自由に生きるんだ」とばかりに柵をブチ破り脱走。
後の「花の慶次」における松風である。
船を漕ぐ少年は最初傍観者だが、彼もまた白馬に心を奪われた一人だった。
牧童たちが無理矢理馬を従わせようとしたのに対し、少年は馬に“認められる”まで喰らい付いた。
白馬は少年を認める。印象深いシーンだ。
彼は馬を救うべく匿うが、交流も束の間で手当てしたばかりの身体でまた走り出す。
妹涙目。イチイチ破壊される柵涙目。じいさん爆睡。
ドラムが白馬と牧童たちのチェイスを盛り上げる。
馬同士の喧嘩も凄い。顎で馬の皮膚をむしるようにちぎる。
草むらにかくれた馬の炙り出し、炎の中を駆け抜ける馬と少年。
白馬がウサギを追うシーンが可愛かった。
渇いた土に弾痕のように刻まれる足跡。
いよいよ牧童たちとの追走劇もクライマックスだ。
水面、フラミンゴの群、距離感が掴めないチェイス。
馬は海を泳ぐワケじゃない。脚を動かして海の中を“駆けて”ゆくのだ。何処までも。