2.《ネタバレ》 「俺たちに明日はない」より粋
これは、傑作である。だが、単純なフィルム・ノワールの傑作というワケではない。
ルーベン・マムーリアンの「市街」と共に二人の男女の逃避行を描いた恋愛映画でもあると思う。
男は善人だった。あんな優しげな表情をした男も、一度刑務所に入れば世間は冷たい。刑務所から出ない方が幸せだったのかもしれない。
ただ一人、愛する妻だけが男を信じている。
男は無実の罪で再び獄中に送られる。
世間は「人殺し!」と叫ぶ、男は人間も神父も神も信じられなくなる、それでも女は男を信じ続けた。
荒んだ男の心を、女はひたすら信じて癒した。
だが男の傷がいくら癒えようとも、背負った十字架は何処までも二人を死の運命から逃さない。
逃げて、逃げて、逃げて・・・気付けば、産んだ赤ん坊に名前を付ける暇すら失っていく。
それでも二人は明日を信じて生き続けようとした。
ようやく霧の晴れたその向こうに、二人は空高く登っていけたのだろうか。