2.《ネタバレ》 日本では「ローマの休日」以前のワイラーはちょっと過小評価気味なのが解せないが、まあ日本人には少々ドギツイものがあるのかもな。俺はこういうのに逆にそそられてしまうのだけど。
「偽りの花園」と並んで最も女が怖いワイラー作品じゃないかと思う。
ワイラーの「ローマの休日」以前のドロドロとしたメロドラマは、思わずギョッとしてしまう作品が多い。
この映画も一見ヒロインが愚かなようで、実は男のダメっ振りがまざまざと刻まれた作品の一つだ。
この映画のオリヴィア・デ・ハヴィランドは「風と共に去りぬ」で良い人のままであり続けた彼女よりも魅力的に思えた。
何せ「ガス燈」のイングリッド・バーグマンがごとく今まで散々騙してきた男に復讐を実行していく過程には背筋がゾクゾクしてしまう。
男は自分の言いなりになる女のままだと思い込むが、当の本人はどんどん変わり復讐の刃をこさえて待ち構えている状況なのだから。それで本当に面白いのは、そのこさえた刃で思いきり痛めつけてやるのではなく、あえてトドメを刺さずに放置プレイでジワジワ精神的苦痛を与える戦法!さっさと楽にしてしまっては面白くない。人間嫌な事は楽しい事よりも長く感じる。それが苦痛なら尚更。生き地獄によってなぶられるのはどれほどキツいだろうか。
それを物語る、ドアの前で叫び続けるモンゴメリー・クリフトの姿が忘れられない。
彼女は、そんな姿を脳裏に描きながら家中の電気を消して過去の男の記憶も消し去っていく。
「嵐が丘」を見た人ならご存知だと思うが、あの映画でかつて愛し合った男女の関係を冷ややかに表したのがピアノの演奏だった。この映画では、女を誘惑する手段としても効果を発揮する。
父親はそれに気付き娘に警告をするが、娘は男がかけた目先の優しさに“惑わされて”骨抜き状態。そんな自分の情けなさ、怒り、父親への申し訳なさ。それが終盤の容赦の無い彼女の力になっていく。