3.《ネタバレ》 「三人」「知られぬ人」から続くトッド・ブラウニングのサーカスもの。この「フリークス(怪物團)」は間違いなくブラウニングの最高傑作でしょ。
この映画には様々な身体的特徴によって差別され、それを跳ね返しながら生きてきた人間たちがひしめき合っている。彼等にスポットライトを当てたブラウニングの手腕、そして本当の怪物は「人間の心」だという事を教えてくれる素晴らしい映画だ。
肉体の繋がった双子の姉妹、腕だけで地面を駆ける男、脚だけで生きる女性、胴と頭を使って生きる男、女と男の間で揺れる者、吃音に苦しむ男、豊かな髭を持つ女、るいそうを芸に活かして生きる男、鳥のように生きる女などなど。
題名を引き裂くように現れる一人の男、狭い空間に押し込められ、それを見てある者は凍りつき、ある者は悲鳴をあげる。映画は見世物にされた者が何者なのかを語り始める。
サーカスのブランコで微笑む女性、それに羨望の眼差しをおくる小さな紳士と淑女。
垂れ幕の外に向けられる笑顔、内側ではドロドロした情念が渦巻く。女がわざと落とした上着を拾い、律儀にかける。彼は彼女を愛していたが、普通の人間たちと偏見の眼で見られる者たちの間にある心の壁。
サーカスの座長はそんな人々を暖かく迎え入れてきたのだろう。それを人々は奇異な眼を向け、嘲笑う。あのパーティー気分だった幸福なシーンを、彼女の言葉が凍りつかせる戦慄・失望。解ってくれる人は良い理解者になり、解らない人は一生解らない。
その魂を裏切った者たちへの復讐戦!雷雨が降り注ぐ中を走る馬車、それを包む不穏な空気。ギャングのように守る者たちの頼もしさ、走り続ける馬車に侵入する衝撃、ナイフ!雨は彼らの仕事を応援するように周囲を遮断する。復讐者が迫りくる恐怖…を応援してしまうクライマックスの畳み掛け。
完全版と編集された版では結末がかなり違う。彼らが和解するシーンがあるか無いかでまったく違う後味なので。