1.《ネタバレ》 F9Fパンサーなどの初期ジェット艦上機の実機が空母に離着艦するシーンだけでも航空ファンには貴重な作品。しかし私は敵を悪、我を善として描いた第二次大戦ものや西部劇、或いは一部の対テロ戦争映画と違い、対朝鮮は軍人達の複雑な思いを描ける所に意義があると思う。「何故戦わねばならぬのか」の主人公の問いに「ここが朝鮮(戦場)だから」という苦しい答えしか出せず、記者会見で「ソ連との代理戦争だと口走ったとたんに追い出された」と苦笑する艦長の姿はこの映画作成を全面支援した米軍人達の、当時正面切っては言えない本音だったのではないか。横須賀から出港する夫の乗った空母を見送るグレースケリーの後ろ姿は一幅の絵画を見るようで美しく切ない。最近の勧善懲悪的娯楽三流戦争映画にはこのようなシーンはない。二人の息子を戦争で亡くして家庭が崩壊している艦長、部下を庇って上官にたて突いたため昇進を逃す隊長、疑問を抱いたまま朝鮮の泥の中で戦死する主人公、私は生き方が下手な真面目な軍人を描いた作品が好きである。