1.「タイガー」自動車が開発中の新車は「イタリア」でデザインされた「パイオニア」号、ライバル社は「ヤマト」自動車で、そこの部長はバー「パンドラ」の常連ときている。とくれば、これはイタリアで学んだ増村保造が、ヤマト=日本映画を打ち破ろうと、自らがそのパイオニアとなり、まさに虎としてパンドラの箱をぶっぱなしてやろうという意欲に満ちた作品と見ることができる。湿った情感をいささかも露呈させることなく、産業スパイ、からむ女たちを捉えたフィルムは、船越英二のとった行動になんの表情も変えない連中をもってピークに達する。ここでようやく田宮二郎に亀裂が生じるもつとめて冷静である。ストーリィには突っ込みを入れたくなりもするが、このクールな文体・・・まいったな~こりゃ。