2.《ネタバレ》 さて、オープニングのシーン。
暗いトーンの映像の中で、市川雷蔵の無言の演技が続く。
ここで既に釘付け。
最初の5分で見事、この作品にハマることができた!
これほど幸せなことはない。
その後、大ハズレが無いことを確信できる感じがしたからだ。
映画の最初の5分で、自分との相性が分かると、どこかで耳にしたことがあるが、まさにそうだと私も思う。
この独特の暗いトーンの映像は、溝口作品でお馴染みの国宝級カメラマン、宮川一夫が撮ったモノ。
さすがという感じ。
そしてオープニングの舞台となっているのが、劇中「晴海町」となっている埋立地。
晴海だから、あの晴海か。
空には轟音と共に飛行機が飛んでいるし。
市川雷蔵は、埋立地の中にポツンと位置する汚いアパートに入っていく。
なんと周りには、お墓が!
ま、埋立地でこのシチュエーションは、当時でもあり得ないが。
あり得ないけど、こんなシチュエーションがあったら最高だと思える程の、サビシ~い場所。
フィルム・ノワールに“黒い華”を添える、素晴らしいロケーションである。
そして程なくして、野川由美子や成田三樹夫が登場。
野川由美子と言えば、そう、あなたでもきっと知っている、あの野川由美子です。
テレビで数年前に放映された『白い巨塔』。
あの中で、鵜飼教授の夫人を演じていた、あの醜いおばさんです。
ま、本作では当然若い頃の野川由美子なんだけど、「別に。」って感じ。
個人的には、若い頃もあんま好きじゃないっす。
この後の展開は、観てからのお楽しみ。
ところで、肝心の成田三樹夫だが。
本作では、凄まじいまでのカッコよさ。
さすが成田三樹夫の代表作の一つと言われるだけのことはあった。
特にラストシーンでの、市川雷蔵のセリフをパクって野川由美子にそのまま吐き捨てるシーン。
コミカルさも相まって、ゾクゾクするほどのカッコよさ。
やっぱり成田三樹夫は最高にかっこよい!