37.《ネタバレ》 ストーリーの前半の情報(ピクルスや偽ニュース番組など)を観る前に知ってしまっていたせいか、中盤は少しかったるく感じてしまった所もあったのだけれど、主人公が最後に作った「偽ニュース番組」での演説シーンで、あふれる涙を抑えることが出来なかった。元々母親にまだ社会主義体制が存続していると信じさせるために作っていたニュース番組は、最後には主人公の理想社会―強欲を捨て、他人に対する思いやりを持とう―を(実は観客にも)訴えかけている。この演説シーンを観ていて「独裁者」のあの演説が脳裏に浮かんだ、と言えば怒られるだろうか?確かにナチが台頭する中でのチャップリンのあの主張は非常に勇気あるもので、それに比べるとこの作品での演説はごく控えめで、ささやかなものだ。しかし、世界がグローバリズム化(総アメリカ化)の方向に向かい、誰も彼もが「勝ち組」になろうと醜い椅子取りゲームに明け暮れている現代、その主張は素朴かつシンプルであるが故に観客の心を強く打つ・・・・・・って、おっとっと、いつのまにか文章に力が入りすぎちまったぜい。要はとても良い映画なのでみんな観てねーって事です。蛇足ながら個人的には、大好きなチュルパン・ハマートヴァがヒロイン役で出演していたのが、予想外の嬉しいオマケでした。<追記>はうっ!いつの間にかこんなに「良」評価が・・・最近DVDで観直しました。映画館で観た時はプロットの面白さに目が行ってしまったのですが、改めて観ると息子の母を想う気持ちが伝わってきて心に沁みました。良い作品は、観る度に新たな発見・感動があります。 【ぐるぐる】さん 9点(2004-04-02 20:37:40) (良:5票) |
36.《ネタバレ》 良質な、いい作品を、久し振りに見ました。コメディ仕立てとはいうけど、傍から見れば滑稽と思えることを真摯にやっているからコメディに見えるだけで、物語自体はかなり重いファミリー・ドラマだと思う。それを軽やかに乗り切ったのは、やはり監督の手腕なのだろう。ソ連邦が崩壊し、ロシアになった数年後かに、「共産党時代は良かった。ノルマさえ果たしていれば給料が貰えたから」という市井の人々の声を伝えるコラムを読んだことがあったが、本作を見て、当時の東欧は皆、急激に入ってきた自由競争の厳しさに晒されて、同じジレンマに苦しんでいたんだろうなと、今更ながらに思った。同時に、うっかりすればしか爪らしいドキュメンタリーに転びそうなテーマを、主人公の若者らしい反骨心、それが原因で母が人事不省に陥り、やがて・・、と。自責と愛情の相克の中で、せめて母に残された時間を母が信じていた時代の中でと、急速に西欧化する世の中にあって、旧時代があたかも現存するように振る舞う息子の苦闘を通した逆転の視線が、無理なく時代を反映していて素晴らしかった。そして、どんな体制の下であっても、結局、生きているのは日々を幸福に、出来れば夢を実現したいなと望む人間なんだよということなんだな。共産主義も民主主義も、理念は立派なのだ。でも、結局、踏みにじるのはやっぱり、人間の欲なんだなと、最後のメッセージが逆に知らしめるようだな。ところで、瓦解した旧体制があるかのような映像を作っていた友人の子が着ていたTシャツがマトリックスTシャツというのが、笑えた。こういうマトリックス使いも、あるんだね。 【由布】さん 9点(2005-02-06 21:44:39) (良:2票) |
35.《ネタバレ》 寝たきりの母親の寝室の中だけに再現された東ドイツを、何とか保ち続けようとする息子の涙ぐましき奔走の日々。 アレックスの大嘘大作戦は「ライフ・イズ・ビューティフル」のグイドのように外の世界から大事な人を守るためだったのだけど、彼の作りあげた嘘の国が彼にとっても理想の国家に変貌していくのが不思議。 向こうみずで孝行息子すぎる彼のそばに現実的な姉アリアーネを置くことでバランスをとり、西側の同僚デニスは映像オタクを生かしてサポート、彼が「作品」の反応を知りたがるのがリアル。 恋人ララのおせっかいも結果的にはよかった? 母クリスティアーネの息子への眼差しを見たらそう思える。 外にさまよい出た母親の眼前をアレが横切る場面は圧巻で、まるで「同志」に別れを告げているよう。(CGとは知らず) 西独製品の作り変えや偽ニュース番組製作などの手作り感が、必死になって知恵をしぼれば何でもできてしまうのを見せてくれる。 40年の東西分断を経験したドイツならではの映画でドイツ近代史のお勉強にもなり、イェーン飛行士やお父さん、校長先生のエピソードとあれもこれもとつめこんで洗練された映画とはいえないかもしれないけれど、陰鬱にせずユーモアをからめた軽快なフットワークが好ましい。 戦後愛する母親と西と東に分けられた作家エーリッヒ・ケストナーが生きていたら、彼の本の少年たちのように母親思いのアレックスに、惜しみない拍手を送ったかもしれない。 【レイン】さん [DVD(字幕)] 9点(2010-08-20 00:00:03) (良:1票) |
34.とんだ掘り出し物。レンタル店で本作を見かけ「母親の命を守るために息子が懸命に嘘をつく」という比較的シンプルなストーリーに惹かれて借りてみました。ます本当に良く出来た脚本に驚かされました。当時の激動のドイツの国内情勢と映画自体とのバランスが抜群に取れていました。あまり必要が無いと思われるキューブリックへのオマージュに思わず笑いがこみ上げ、母に東ドイツは健在であるかのように振舞う息子の一生懸命な姿にも笑いながらも家族とはどうあるべきかを改めて考えさせられた。音楽も強く印象に残り、より一層感動を引き立ててくれる。この母への嘘つきに全員が協力的ではなく、半ば投げやりな態度の姉がいたことにも非常にユーモアが感じられ良質なストーリーだけでなくこういったキャラクター像を提案したスタッフの実力に頭が下がります。そしてラストの花火。またもや素晴らしい音楽に乗せて流れるこのラストに感動せずにはいられなかった。近年の韓国映画と同様、ドイツの映画も徐々に本領発揮と言ったところでしょうか。ハリウッドに負けない良質な映画を作れる国が増えているのは紛れも無く事実。ハリウッドももう少しCGばっかの映画に頼らずにこういう金を掛けずに素晴らしい映画作ってみようよ。マジで。 |
33.「素晴らしいわ」が全てを物語っている。社会主義は資本主義に敗北した。しかし目の前に映しだされているのは、社会主義がついに到達した理想の世界。そして傍らには、自分のためにそんな世界を創造してくれた息子。母親の言葉は、全てに対しての賛辞だろう。この映画には、西側諸国が唾棄してきた社会主義という理念が根っこに持っていた純朴さ、にスポットが当たっている。一夜にして資本主義なだれ込んで来た東ドイツ。果してそれは本当に幸せな事だったのだろうか?アメリカは、日本は本当に豊かな国だろうか?「西側的退廃文化」は’90年代から確実に社会的病理を生み出し始めた。現在、旧東ドイツ地域の失業率は20%以上とも言われる。「今こそ我々は手を取り合い、次なる世界へと飛躍するのです。」S・イェーンの言葉は、資本主義の水にどっぷり浸りきり、他を顧みることのなくなった自分達に向けられたメッセージなのだろう。 【C-14219】さん 9点(2004-10-27 23:01:05) (良:1票) |
32.《ネタバレ》 前半はコメディ仕立てだけど、私は何故か途中から涙腺をやられた。国家の再統一という「国家的事件」と大黒柱の母親の闘病という「家族的事件」の2つの軸を重ね合わせ、時代にほんろうされた家族が再生する姿が描けていると思う。母親とララが後半、アレックスのいない病室で喧嘩していたように、ラストでは母親は嘘を知らされていたはず。しかし、死期を迎えた母親に見せた最後の嘘のニュースは、少年の頃のアレックスのヒーローだった元宇宙飛行士が臨時の国家元首に扮して、統一された新ドイツの姿を語る姿。それは西ドイツがいつか失って、東ドイツがたどり着くことに失敗したような現実にはない理想の国の姿。アレックスに優しい視線を向けながら母親が語る「すばらしいわ」の言葉は、国家再統一という歴史の荒波の中で、人々が失ってはならないものに気付いたアレックスの成長に向けられたもののように思える。新しい国の誕生を祝う花火を見ながら、万感の思いを胸に母親は静かに旅立っていく。父親の所在をめぐる嘘を告白し、アレックスたち家族の優しい嘘を受け入れた母親はすべてに安心しきったような穏やかな表情だ。おかしくて笑い、しかし、同時に涙が出る、そんな不思議な映画だった。余談ですが、ララ役の女優さん、可憐でかわいいですねえ。 【しまうま】さん 9点(2004-10-11 03:19:35) (良:1票) |
31.母のために息子がした、世界が何一つ変わらないフリは、徐々に自分自身の理想国家になっていく彼の思いは、優しさと切なさに溢れてた。そして私たちが本当に幸せに暮らす社会とは?というメッセージがあるように思う。私がまだ幼い頃に東ドイツにいた経験があるので、もう今は存在しないのだと思うと世の中不思議だなぁ。ちなみに主人公の彼は多少マザコンがはいってそうな感じだが、まぁいい。 |
30.《ネタバレ》 欧州で冷戦終結時に消滅した国家はユーゴスラヴィアと東独だけ(チェコスロバキアは消滅というよりもスロバキアの分離という感じ)、エミール・クストリッツァが『アンダーグラウンド』でエモく訴えたようことを、ちょっと変わった視点で映像化してくれています。それはもはや存在しない東独という国とその社会へのノスタルジックな惜別の情なんですが、監督や脚本家は旧東独出身者だと思い込んでいたら、実はみな旧西独の人たちだったんで驚きました。ドイツでは旧東独出身者が昔を懐かしがる“オスタルギー”という概念があるそうですが、それを逆手に撮った映画だと言えるかもしれません。一つ言えることは、それがナチズムだろうが共産主義であろうとも、全体主義というものはアレックスの母親と同じようにその体制に疑問を持たずに参加すれば心地よいものであるということでしょう。そこが恐ろしいところです。 冒頭で反政府デモに参加していたアレックスですが、母親を欺くためにフェイクニュース番組を制作しているうちに彼自身が“オスタルギー”の沼にはまり込んでゆくところがこの映画の脚本の奥深いところです。物語の後半では、彼がフェイクとして母親に伝える社会ニュースは単なるつじつま合わせを超越して、実はアレックスが望んでいた理想の東独社会であることに気づかされます。サッカーWカップで優勝したのは史実では統一ドイツではなく西独だし、東独初の宇宙飛行士イェーンはタクシー運転手に落ちぶれたことはありませんでした。ここら辺の改変は意味深です。母親もラスト近くでララから社会の真相を聞かされたのは明らかなのに、その後は死ぬまで息子のお芝居につきあってくれます。彼女が再入院してからラストまでの15分こそが、この映画の真骨頂なのではないでしょうか。映画館で観ていたらたぶん号泣していたかもしれない15分でした。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2019-09-23 22:26:35) |
29.《ネタバレ》 面白い!そして愛があるね!! +ララ役の彼女が超可愛い♥ ニセニュース番組を作る友達もいい奴だな~後半とか機材やスタジオも本格的になっとる~(笑) シリアスさとコミカルな部分のバランスがよくとてもいいです。おすすめですハイ 【Kaname】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2017-04-12 20:56:12) |
28.《ネタバレ》 ただ重たいだけのドイツ映画はたくさんあるけど このくらいポップに映画をつくれるセンスがいい |
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27.ドイツ映画に馴染みの無い人にはお勧め。 ベルリンの壁の崩壊、そこから続々と西ドイツに入国するトラバント… そんなたった数ヶ月の激動の期間であっと言う間に変化した東ドイツ。 止める事のできない変化の中で、必死に母親の為にとっくに崩壊した東ドイツを装い、 誤魔化す主人公たちは観ていてとても面白いです。 【功聖良】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-04-03 23:18:44) |
26.最初に見た時は名作と感じつつも好きになれなかった映画だった。それは母の容態が心配で嘘をつくのはわかるけども、西ドイツの難民が東ドイツに流れてくるというような事実とまったく逆の嘘が許せなかったからだと思う。 しかしそれは数年後改めて見て変わった。宇宙飛行士のエピソードにもあるが、広い宇宙からすれば地球はちっぽけな星、そこで資本主義とか社会主義などと対立したり、東と西に分かれていがみ合うなどとはほんの些細なこと。家族の思い人々の思いが通じ、皆仲良く暮らせればそれに越したことではないか。 この映画は、ベルリンの壁崩落からドイツ統一までのわずかの間に急激に起こったことを背景に、家族と家族を取り巻く人々をの笑いと涙、喜びと悲しみを実にていねいに描いている。 母親のため嘘を貫いたアレックスと嘘と解りながらそのまま死んでいった母親、亡命しても家族のことを思い続けた父親、その他の人々の様々な想い、すばらしい。ひときわ陰の功労者なのが恋人ララだと思う。 音楽もまた実にすばらしい。ヤン・ティルセンはアメリでも印象に残ったが、「グッバイ、レーニン!」の音楽はピアノ演奏を中心に実によい。名作の影に名曲有り。 【ESPERANZA】さん [DVD(字幕)] 9点(2011-06-30 10:19:11) |
25.《ネタバレ》 政治を題材にしつつ、同時にコメディタッチの温かい家族ドラマでもあるという稀有な作品。社会主義というと怖いイメージしかなかったけれども、思想の根底には平和と幸福を追求する純粋さがあるのかなあと思わされた(だからこそ恐ろしくもあるんだろうけれども)。 息子のお手製の偽ニュース映像を観て母親が泣くクライマックスはほんとうに素晴らしい。政治的きな臭さや現実の過酷さを、息子の強引極まりない嘘が振り切ってしまう。当然のごとく嘘は破綻するのだけれども、嘘というフィルターを透してかえってその愛情の真っ当さが顕わになるという脚本の上手さには、唸った。母親の「素晴らしいわ」という言葉は息子の嘘に調子を合わせてはいるんだけど、嘘じゃないんだよね。あの瞬間、突き通した嘘が真実になった。 「グッバイ、レーニン」というタイトルも秀逸。母親の純粋さは裏を返せば致命的なもろさでもあったはずで、本来ならかつての心の支柱であった社会主義に訣別するのは不可能だったろう。しかし映画を最後まで観ると、彼女は確かにこう言えたはずだと思えるのだ。 【no one】さん [DVD(字幕)] 9点(2008-08-06 17:28:40) |
24.《ネタバレ》 本題の前に一言。 ララ役の女の子がメチャクチャ可愛い! もっと出演作を観たいんですが、多くの作品には出演していない様ですね。残念!! 本題です。 期待以上の作品でした。 中でも特筆すべきは、やはりラスト近く、何も知らないフリをしながら、息子を見つめる母親の穏やかな眼差しでしょうか。 環境の変化に対する戸惑い、成長した息子への驚き、そして、自分に対する行動への感謝 等々 様々な思いが入り混じった眼差し・・・ 鑑賞していて暖かい気持ちになります。 良い映画です。 【たくわん】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2008-06-23 18:37:15) |
23.《ネタバレ》 否定するのは簡単です。過去にしがみつき、変わってしまったものを認めぬのではなくそこにどう折り合いをつけ、どう受け入れ、どう変化していくのか、そういったものがこの作品に描かれていたんじゃないかと。そして、そんな一人の少年の心の成長を包み込むものは・・・。 とっても素敵な作品だと思います。 |
22.《ネタバレ》 なくなった東ドイツがまだあると嘘をつくのはすごくいいアイデアだと思いました。絶対不可能なことだけど、多分これをやりたかった人はたくさんいたんじゃないかと思う。ソ連型社会主義が変な方向に向かっていることはうすうす感づきながらやっぱり否定されるのは悲しいんじゃないかと。今度またゆっくり観たいです。 【HOPUKO】さん [DVD(字幕)] 9点(2008-02-08 15:04:20) |
21.《ネタバレ》 母の体を思いやり、それはもう何があっても守り続ける一つの嘘。がむしゃらに、時に強引に嘘をつき続ける息子の根底には母への深い愛があって、まわりも(そう、母親も!)それを知っているから結局その青臭さにつきあう。なんて優しい映画。ニュースを撮ってくれた彼なんて、あんなにいい友人、いないよ。大事にしな。最後のみんなでニュースを見るシーン、あそこではもう母は真実を知っているんだろうなあと思いながら見ていたので、DVD特典の未公開シーンでアレ?となった。あれっ母は真実を知らないのか…?あ、これも母の嘘、なのか。す、すごい。一瞬だまされた。息子の嘘もすばらしいが母にはかなわない。母の愛というものの深さを測るには、私は若すぎるのだろう。ちょっと点上乗せ。 【デルモゾールG軟膏】さん [DVD(字幕)] 9点(2008-01-20 00:54:07) |
【亜空間】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-12-12 12:45:03) |
19.シリアス、感動、ラブストーリー、ファミリー、コメディ、政治、風刺などの要素がここまで絶妙のバランスで組み合わさった映画は見たことがない。そもそも東の体制が一種の壮大なお笑いのネタみたいなものだったからこそこんな映画が存在するわけだが、西も同時に皮肉る(むしろ皮肉はそちらに対してが多い)バランス感覚も素晴らしい。シリアスな部分を笑えるというのは凄いことだと思う。 【Arufu】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-11-12 14:02:31) |
18.《ネタバレ》 ある意味シュールではあるのだけど、ベルリンの壁の崩壊、東西ドイツの統合というあの時を見ていただけに、なんか響くものがありましたね。母のために息子が必死に東西ドイツの統合を隠す姿は非常に滑稽に見えるのだけど、その滑稽さがなんか悲しくてね。母も最後には息子のウソに気付く訳だけど、それを墓穴までもっていく姿にちょっと泣けたなぁ。日本だって決して他人事では無い訳だけど、島国ではこういう発想はちょっと気が付かないね。 【奥州亭三景】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-07-23 19:56:19) |