1.《ネタバレ》 唐の時代、宮仕えする日本人の男が、帰国をかけて、ある男の抹殺を請け負う。という導入部で、もうツカミはOK。しかも、その命を狙うべき男の犯した罪とは、理不尽な処刑命令に背いた事。すなわち“義”の男。ってんだからもうシビレまくっちゃいますね、わくわく。日本に帰りたくても帰れない刺客の日本人・水島上等兵を演じるのが中井貴一、これがとてつもなく強い。強過ぎ。水島じゃないけど。この強さ、物語の設定では彼は13歳で遣唐使として唐に渡り、唐で剣術を身に付けたことになってはいるけれども、アクション映画の文脈においては明らかに彼の役どころは“サムライ”ですね(時代的に合わないのはさておき)。ついに狙うべき男との対決となるが、男は、経典を運ぶ僧侶一行の護衛を任された身。経典を運び終わるまで、勝負はお預け、となり、道中襲い来る突厥との戦いに、共闘することとなる。もう最高ですね。何よりこの作品に感動したのは、この物語りが、「去る者」の物語であるから。絶望的な戦いの中、確かに主人公たちは人間離れした剣術で、派手なアクションを繰り広げるのだけれど、いくら超人的活躍が続いても、事態が絶望的であることは変わりが無い訳で、その中で、ひとりまたひとりと、味方が斃れていく。その印象的なこと、まるで、味方が斃れていく姿を描くためにこそ、いつ果てるともなき戦いが繰り広げられるかのよう。ラストは、静かに“英雄”も立ち去り、映画を終えるのですが、まるでどうでもいいことの補足説明みたいに「ってな訳で唐は栄えましたとさ」と付け足されるのが、さらに余韻を深めるのでありました。・・・それにしても、突厥が狙うお宝、これは仏舎利だった訳ですが(で、「CGがショボい」と文句を言われる訳ですが)、わたしゃ最初、マトリョーシカかと思いましたぜ。